【0001】
本考案は、複数の紙(紙束)を綴じて保持するファイルフォルダに関する。
【0002】
従来、紙束を綴じて保持するファイルフォルダは、例えば特許文献1に開示されるように、書類ファスナと呼ばれる金属製もしくは樹脂製の綴じ具を用いて、紙束を綴じるものである。
図7に特許文献1に開示されるファイルフォルダ40及び書類ファスナ50の斜視図を示す。また図8に、図7のファイルフォルダ40に紙束60を保持した状態の斜視図を示す。図7に示すように書類ファスナ50は、長手方向に延びる胴部51と、この胴部51の両端から延びる一対の折り返し片52、53とを有する樹脂製の板素材からなり、樹脂シートをプレス工程等により切断して作られる。
【0003】
前記板素材の胴部51の長さは、ファイルフォルダ40の綴じ穴40aの離間距離に対応している。また、一対の折り返し片52、53は、胴部51の両端より折り曲がって、ファイルフォルダ40の綴じ穴40aに差し込み可能な寸法に形成されている。
そして、図8に示すように書類ファスナ50の折り返し片52、53を先にファイルフォルダ50の綴じ穴50aに裏側から差し込んだ後、さらに紙束60の綴じ穴60aに裏側から差し込み、図8に示すように表側に突出した折り返し片52、53を相寄る方向に折り曲げることによって、綴じ込むようになっている。
しかしながら、前記のようにファイルフォルダに用いる従来の書類ファスナは金属製か、或いは特許文献1に開示されるように樹脂製であるため、例えばファイルフォルダを破棄する際に、分別のために書類ファスナを取り外す必要があり、作業が煩雑になるという課題があった。
【0004】
このような課題に対し、本願出願人は、フォルダ本体と同様に紙素材により形成された綴じ具を用いるファイルフォルダを発明し、特許文献2において開示した。
このファイルフォルダによれば、従来のような金属製や樹脂製の書類ファスナを用いなくても強固に紙束を綴じることができる。
また、綴じ具がフォルダ本体と同じ材質により一体形成されるため、破棄する際に、分別作業を省くことができる。
【0010】
本考案によれば、紙束を綴じて保持するファイルフォルダにおいて、フォルダ本体と同素材の綴じ具により紙束を綴じることにより、破棄の際の分別作業を無くすとともに、荷重の大きい書類を保持する場合であっても、綴じ具が破損することのないファイルフォルダを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本考案に係るファイルフォルダを綴じた状態の正面図である。
【図2】図2は、図1のファイルフォルダを開いた状態の斜視図である。
【図3】図3(a)、(b)は、図1、図2のファイルフォルダに書類(紙束)を綴じた状態を示す斜視図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、図1のファイルフォルダが備えるファスナ部(綴じ具)を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5(a)〜(e)は、図4のファスナ部により紙束を綴じる動作を説明するための断面図である。
【図6】図6は、図4のファスナ部の変形例を示す斜視図である。
【図7】図7は、従来のファイルフォルダの構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7のファイルフォルダに紙束を綴じた状態の斜視図である。
以下、本考案に係るファイルフォルダの実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本考案に係るファイルフォルダを閉じた状態の正面図であり、図2は、図1のファイルフォルダを開いた状態の斜視図である。また、図3(a)、(b)は、図1、図2のファイルフォルダに書類(紙束)を綴じた状態を示す斜視図である。
【0013】
ファイルフォルダ1は、例えば厚紙によりシート状に形成され、折り筋が設けられることによって、図2に示すように二つ折りの状態に折り曲げ可能となされている。また、二つ折りされるため、表表紙3(フォルダ本体)と裏表紙4(フォルダ本体)とが形成され、表表紙3の一辺には、一部が突起した見出し部分2が形成されている(図1は表表紙3を示す)。
【0014】
このファイルフォルダ1において、表表紙3もしくは裏表紙4の上辺と側辺の縁部側には、それぞれ切り込みによりファスナ部10(綴じ具)が形成されている(本実施の形態では表表紙3の上辺及び側辺の縁部側)。図3(a)は、表表紙3の側辺に設けられたファスナ部10によって紙束である書類20が綴じられた例を示し、図3(b)は、表表紙3の上辺縁部に設けられたファスナ部10によって書類20が綴じられた例を示している。このように用途、好みに応じて書類20を綴じる位置を選ぶことができるようになっている。
【0015】
また、本実施の形態において、ファスナ部10が設けられた表紙(本実施形態では表表示3)の片側面(本実施形態では外側面)における、2つのファスナ部10の上には、それぞれ和紙シール部材11(説明のために絵柄含めてクロスハッチングで示す)が貼られている。この和紙シール部材11は、靭皮繊維としての例えば楮(こうぞ)の樹皮繊維を原料として形成された和紙の一面に、接着剤を設けたものである。
楮の樹皮繊維は、繊維が長く、強靱であるため、破れにくいという特徴を有する。そのため、この和紙シール部材11は、ファスナ部10の強度を向上するために設けられている。
表表紙3の外側面に絵柄が施された和紙シール部材11を貼った場合、図3(a)、(b)に示すように、ファスナ部10で書類20を綴じると、和紙の絵柄がファスナ部10の表側になるため、装飾性を向上することができる。
尚、和紙シール部材11の一面に形成される接着剤としては、ファイル廃棄時に環境に優しい澱粉糊を用いることが好ましい。
また、和紙の原料としては、靱皮繊維であれば、特に限定されるものではなく、前記した楮の樹皮繊維の他、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの樹皮繊維を用いてもよい。
【0016】
さらに、ファスナ部10が設けられる表紙(本実施形態では表表紙3)の下端部には、内側に折り曲げ可能なベロ部13が設けられている。このベロ部13には、表紙下辺に沿って平行に複数(図では2箇所)の折り筋が設けられており、綴じる書類20の厚さによって折り曲げ位置を変えることができる。このように内側に折り曲げ可能なベロ部12を設けることにより、ベロ部13が書類20の荷重を受けて、ファスナ部10にかかる荷重の負荷を軽減するように構成されている。
【0017】
図4(a)に拡大して示すように、ファスナ部10は、使用前の状態においては、表表紙3に和紙シール部材11が貼られた後、切り込みにより形成される(図4(a)において和紙シール部11は表紙側に貼られているため図示されない)。ファスナ部10は、その長手方向に3つの部位に分けられる。
具体的には、ファスナ部10は、一端側に設けられたオス足部10aと、他端側に設けられたメス足部10bと、それらの間に設けられた肩部10cとからなる。前記オス足部10aは、図示するように先端に細先部10a1を有し、メス足部10bと肩部10cには、その略中央の位置に例えば円形の小孔10b1(第1の小孔)と、小孔10c1(第2の小孔)とがそれぞれ設けられている。
【0018】
また、ファスナ部10は、使用される際には、図4(b)に示すように、オス足部10aとメス足部10bとが肩部10cに対して略直角となるように断面U字状に折り曲げられ、それらが綴じるべき書類(紙束)に形成された一対の細長孔(貫通孔)に挿入されて用いられる。
詳しく説明すると、図4(c)に示すように、書類20には、ファスナ部10のオス足部10aが挿入可能な細長孔20aと、メス足部20bが挿入可能な細長孔20bと、それら細長孔20a,20bの間に位置し、ファスナ部10の細先部10a1が挿入可能な小孔20c(第3の小孔)とが形成されている。
尚、これら長孔20a、20b、小孔20cは、予め専用の穿孔具(図示せず)等を用いて書類20に形成しておく必要がある。
【0019】
そして、図4(c)に示すように書類20の下面側から、前記細長孔20a、20bに、それぞれファスナ部10のオス足部10aとメス足部10bとが挿入され、書類20の上面側において上方に突出した状態となされる。また、このとき、書類20の小孔20cの位置とファスナ部10の小孔10c1の位置が合った状態となる。
さらに、図4(d)に示すように、先にメス足部10bを内側に折り曲げ、小孔10b1と小孔20cとの位置を合わせた状態で、その上からオス足部10aを内側に折り曲げ、細先部10a1を縦に重なる3つの小孔10b1、20c、10c1に入れ込むことにより書類20が綴じられる。
書類20が綴じられた状態において、図4(d)に示すようにファスナ部10のオス足部10aとメス足部10bの上面には、和紙シール部材11が貼られた状態であるため、使用者は和紙の模様(絵柄)を愉しむことができる。
【0020】
続いて、前記ファスナ部10により書類20を綴じる一連の作業について、図5を用いて、より具体的に説明する。図5(a)〜(e)は、ファイルフォルダ1のファスナ部10により書類20を綴じる工程を順に示す断面図である。
図5(a)に示すように書類20には、予め専用の穿孔具(図示せず)等を用いて長孔20a、20b、小孔20cを形成しておく。
また、ファイルフォルダ1において、切り込みにより形成されたファスナ部10のオス足部10aとメス足部10bとを折り曲げて書類20側に立ち上げる。
【0021】
次いで、図5(b)に示すように、前記ファスナ部10のオス足部10aとメス足部10bとを書類20の長孔20aと長孔20bとにそれぞれ挿入し、ファイルフォルダ1の裏表紙4上に書類20を重ねる。
また、図5(c)に示すように、書類20の表側において、長孔20bから突出したファスナ部10のメス足部10bを先に折り曲げ、その上からオス足部10aを折り重ねる。このとき、ファスナ部10の小孔10c1と書類20の小孔20cとメス足部10b(ファスナ部10)の小孔10b1とが縦に重なった状態となされる。
【0022】
ここで、前記小孔10c1、20c、10b1は同じ径に形成されているが、図5(d)に示すように、前記小孔の径よりも小さい径の押し棒31を有する押し具30等を用い、前記小孔の上に重ねられたオス足部10aの細先部10a1を、前記小孔10b1、20c、10c1の順に押し込む。
これにより図5(e)に示すように、ファスナ部10によって書類20が強固に綴じられた状態となる。
ここで、ファスナ部10には、前記したように和紙シール部材11が貼られているため、引張り方向の強度が向上しており、書類20が厚く荷重が大きいものであっても、ファスナ部10の破損を防止することができる。
【0023】
さらには、表表紙3の下端側に設けられたベロ部13をファイル内側に折り曲げ、綴じた書類20を下側から支えることができる。
それにより、書類20の荷重がベロ部13によって受け止められ、ファスナ部10にかかる荷重を大幅に軽減することができる。
【0024】
このように本考案に係る実施の形態によれば、ファイル本体(表表紙3、裏表紙4)と同じ材質で形成されたファスナ部10を用いて書類20を綴じるため、例えば破棄する際に、分別作業を省くことができる。
また、和紙シール部材11が取り付けられたファスナ部10により書類20を綴じているため、ファスナ部10の引張り方向の強度が格段に向上し、書類20の荷重が大きい場合であってもファスナ部10の破損を防止することができる。
【0025】
また、ファスナ部10が設けられた表表紙3の下端側に、ファイル内側に折り曲げ可能なベロ部13が設けられているため、これにより書類20の荷重を受け止め、ファスナ部10に加わる荷重を大幅に軽減することができる。
また、前記ファスナ部10は、表表紙3の上辺と側辺とに設けられているため、使用者は、必要に応じていずれかのファスナ部10を用いて書類20を綴じればよく、いずれの場合も、和紙シール部材11による効果と、ベロ部13による効果とを得ることができる。
【0026】
尚、書類枚数が増えても対応できるように、ファスナ部10のメス足部10bに設ける小孔10b1の形状、及び肩部10cに設ける小孔10c1の形状は、図6に示すようにファスナ部10の長手方向に沿って延びる長円形に形成しておくことが望ましい。それにより、ファスナ部10の足部を折り畳んだ際に小孔10b1と小孔20cと小孔10c1とが厚さ方向に連通する状態とすることができる。
また、オス足部10aに設ける細先部10a1の長さは、少なくとも書類の厚さ分の長さを有するように予め長めに形成しておけばよく、特にこの場合、図6に示すように細先部10a1に鈎部10a2を設け、小孔10c1に鈎部10a2が係止する構成とすることが望ましい。
【0027】
また、前記実施の形態においては、ファスナ部10(綴じ具)が形成された表表紙3(フォルダ本体)の片側面のみに和紙シール部材11を貼るものとしたが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。即ち、綴じ具が形成されたフォルダ本体の両面に和紙シール部材を貼った構成としてもよい。
【0028】
また、前記実施の形態においては、ファイルフォルダ1は全て厚紙により形成されているものとしたが、材質は紙に限定されるものではなく、例えば、プラスチック樹脂により形成してもよい。
また、前記実施の形態においては、ファスナ部10をファイルフォルダ1の折り筋が形成されている表表紙3の一辺側に設けたが、その構成に限定されるものではなく、その他の一辺の縁部側に設けてもよい。或いは複数の辺の縁部側にそれぞれ設けて、使用者が使うファスナ部10を選ぶようにしてもよい。
【0029】
また、前記実施の形態においては、フォルダ本体として、表表紙3と裏表紙4の二つ折りの構成を示したが、それに限らず、フォルダ本体を1枚の構成とし、その上に書類20(紙束)を載せて支持するようにしてもよい。
1 ファイルフォルダ
2 見出し部
3 表表紙(フォルダ本体)
4 裏表紙(フォルダ本体)
10 ファスナ部(綴じ具)
10a オス足部
10a1 細先部
10b メス足部
10b1 小孔(第1の小孔)
10c 肩部
10c1 小孔(第2の小孔)
11 和紙シール部材(和紙)
20 書類(紙束)
20a 長孔
20b 長孔
20c 小孔
【課題】フォルダ本体と同素材の綴じ具により紙束を綴じることにより、破棄の際の分別作業を無くすとともに、荷重の大きい書類を保持する場合であっても、綴じ具が破損することのないファイルフォルダを提供する。【解決手段】紙束を支持するシート状のフォルダ本体3と、フォルダ本体と同素材からなり一体形成された綴じ具10とを備え、綴じ具により紙束を綴じて保持するファイルフォルダ1であって、綴じ具は、フォルダ本体の縁部に設けられ、フォルダ本体の少なくとも一面において、綴じ具を含む領域には、靭皮繊維を原料として形成された和紙11が貼られている。
インターネット上にあるこの特許番号にリンクします(発見しだい自動作成):