(54)【考案の名称】着物用のインナーセット

(51)【国際特許分類】

A41D 1/00 衣服

(73)【実用新案権者】株式会社 エデン

(72)【考案者】【考案者】

[fig000002]
【選択図】図2

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は、女性が和服を着用するときに、着付けが容易にできるようにする着物用のインナーセットに関する。とくに、インナーセット衿と組み合わせた着物用のインナーセットに関する。

【従来の技術】

【0002】
着物の着用に際しては、肌襦袢と裾よけをつけ、衿の付いた長襦袢を下に着て、その都度長襦袢用腰紐1本を体に2周して締め、伊達締めを締め、その上に着物を着て腰紐2本で体を2周して締め、さらに伊達締めを締める。この結果、紐だけでも3本と伊達締め2枚とその上に帯を締める手順が通常であるが、初心者にとってこの手順は極めて煩雑であるという課題がある。
【0003】
この課題を解決するために、着付けを簡易化する手法として、長襦袢の着用を省略する着物がある。すなわち、衿の中央部に衿に直角に背当布を取り付け、背当布の下部に背当布に直角に結び紐を取り付けた例が示されている。また、いわゆる「嘘つき衿」「美容衿」「仕立て衿」などの名称で商品化されているものがある。
【0004】
これは、衿を首周りに着用し、背中に垂れた背当布(力布)にある結び紐を着用者の前面に回し、衿の上から紐の先端同士を結ぶ事により、紐で衿を体に固定するものである。長襦袢の着用を省略して、代わりにこの種の衿だけを着用し、その上に着物を着用することも可能で、外観上は長襦袢を着ているように見え、かつ長襦袢は着ないことから着用が容易となる。(特許文献1)
【0005】
この例においては、衿の固定のために結び紐を着用者の背中から前面まで腹部を1周させているために、着用者が窮屈に感じる欠点がある。また、紐を結ぶ手間を要するという課題も有る。
【0006】
長襦袢の上に着る着物の衿の固定を容易にする方法も提案されている。ここでは、着物の衽(おくみ)の上端縁の近傍にベルトを取り付け、身八口を通して着物の内側から外側へ抜けて前身頃側へ回し、上衽側に取り付けたもう1本のベルトは着物の外から背側を経由して反対側の前身頃側へ回す。
【0007】
さらに、ベルトの先端に取り付けた係合部材により体の前でベルト同士を係合させる。このベルトにより、着物全体を体に固定する。係合部材の使用により紐を結ぶ手間は不要となる。この提案では、着物の下に長襦絆も着用しているが、長襦袢の体への固定についても、同様の手法により長襦袢用ベルトで係合している。(特許文献2)
【0008】
この例においても、着物の固定に関して3本のベルトが着用者の腹部をほぼ3周している。そのために、着用者が窮屈に感じるという欠点がある。2つの例に共通している課題は、紐もしくはベルト自体を着用者の体に周回させ、紐もしくはベルトの先端同士を着用者の前面で結ぶもしくは係合している事にある。

【0009】

【効果】

【0013】
本考案によれば、着物用のインナーセットの2本のベルトまたは紐は着用者の腰回りを1周未満しか回らず、残りの部分は肩から首を回るインナーセット衿が体への着物用のインナーセットの固定に寄与する。この結果、衿を体に固定するために必要な力が腰、胸、肩、首に分散し、着用者の窮屈感を軽減する効果が生じる。また、留め具による固定は容易で、着物の着用が短時間で行え、着用者の快適感とスリム化も達成し、かつ全体のシルエットも綺麗に映る効果も生じ、日本文化である着物の黄金比の効果も上がるという効果がある。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】着物用のインナーセットの平面図
【図2】着物用のインナーセットを着用者に取り付けた正面見取図
【図3】着物用のインナーセットを着用者に取り付けた背面見取図
【図4】着物の下前を係合した状態を示す見取図
【図5】着物の上前を係合した状態を示す見取図
【図6】着物を着用した胴部断面図
【図7】簡易着物でお端折りが付いている場合の見取図
【図8】簡易着物のお端折りの一部を削除した場合の見取図
【図9】図8において円形で示した範囲の詳細図

【0015】
図1〜6を参照して、本考案の実施例を説明する。本実施例においては、着用者は先ず肌儒絆もしくは着物ランジェリーを着用し、長襦袢は着用せず、その代わりに着物用のインナーセットを着用し、次に着物用のインナーセットの上に普通の着物を着用する。普通の着物とは、着付けの時に丈を調整するためのお端折りを作るものを指す。
【0016】
図1は、本考案による着物用のインナーセット1の平面図である。着物用のインナーセット衿11は平面の布衿あるいは布と芯を組み合わせた立体衿などよりなる。着物用のインナーセット衿11の中央部に、インナーセット衿11に対して直角に、T字形を成すように力布12が取り付けられている。力布12の取付は縫合あるいは接着などによる。力布12の材料は布などであり、場合によっては強度を補強するために内部に芯を挿入してもよい。また力布12の長さは、着用者のほぼ腰の辺り、あるいは腰の上部の辺りに届くものである。
【0017】
力布12の下部には力布12に対して直角に第1のベルト13(または紐。以下では紐は省略する。)がほぼ左右対称(シンメトリー)に取付けられている(以下では着用者からみて右側はa、左側はbの添字を付けて示すことがある。両側で同じ形態の場合は添字を付けない場合が有る。)。 着用者の身長にも依存するが、第1のベルト13はインナーセット衿11の例えば約25cm下(腰と胸の中間部辺り)に取付けられている。さらに、第1のベルト13の例えば約5cm下(腰の上部辺り)に第2のベルト16が取付けられている。第1のベルト13および第2のベルト16の力布12への取付けは縫合、接着などによる。
【0018】
第1のベルト13はインナーセット衿11の端部をインナーセット1に係合するために使われ、第2のベルト16は着物の着物衿21または衽28をインナーセットに係合するために使われる。着物用のインナーセット1の第1のベルト13および第2のベルト16の左右それぞれの中間には長さ調整具15および18が取り付けられている。第1のベルト13および第2のベルト16のそれぞれの先端には留め具14および17が取付けられている。留め具14および17は、クリップなど布を挟んで止める機構を有し、厚みの少ないものであれば任意のもので良い。
【0019】
図2は、着用者の正面から見た着物用のインナーセット1を取付けた状況を示す。図3は、着用者の背面から見た着物用のインナーセット1を取付けた状況を示す。着物用のインナーセット1において、インナーセット衿11と力布12をT字型に組み合わせている。図2に示すように、着用にあたり、まず、インナーセット衿11を首101に巻回し、着用者の右側のインナーセット衿11aの先端を着用者の前面に持ってきて、第1のベルト13b先端の留め具14bをもって両者を係合する。次に着用者の左側のインナーセット衿11bの先端を、着用者の前面に持ってきて、右側のインナーセット衿11aの上から、着物用のインナーセット1の第1のベルトの先端の留め具14aをもって両者を係合する。
【0020】
着用者の体格に応じて、着物用のインナーセット1の第1のベルト13の左右の長さ調整具15aおよび15bにより第1のベルト13の長さを調整する。着物用のインナーセット1の第1のベルト13がゴムのような伸縮自在の素材よりなる場合には、長さ調整具15aおよび15bは不要である。なお、留め具14の代わりに、インナーセット衿11の先端および第1のベルト13の両先端にスナップボタン、面ファスナーなどの固定具を取付けて、オスメスの固定具同士を結合させてインナーセット衿11a、11bの両端部と第1べル卜13aおよび13bをそれぞれ係合しても良い。
【0021】
本実施例においては普通の着物を着用する場合を説明する。図4は、インナーセット衿11、力布12、第1のベルト13および第2のベルト16よりなる着物用のインナーセット1の上に着物2を着用した場合の正面図である。袖24の内側に伊達袖27が縫い付けられており、長襦袢を着用しなくても外観上は通常の長襦袢を着用している場合と同じに見える。なお、普通の着物を伊達袖がない状態で着ても構わない
【0022】
図4は、右側の前身頃と衽(おくみ)を身体の前面に巻き付けている着物の着用途中を示している。着用者の右側の着物衿21aと衽28aを着用者の前面に持ってきて、着物衿21aと衽28aの境界近傍にある着物衿21aもしくは衽端部281aを第2のベルト16aの留め具17bによって係合する。図4においては衽端部281aではなく着物衿21aを係合する例を図示している。通常の着物においては、着物衿21aと衽28aは互いに縫合され同一平面の布地を形成しているために、第2のベルト16bの留め具17bによって着物衿21aもしくは衽端部281aのいずれを係合しても、係合の効果に大きな差は生じない。
【0023】
次に、図5に示すように、着用者の着物2の左側の上前身頃23と衽28bを着用者の前面に持ってくる。第2のベルト16aの先端を、右にある身八口26aを経由して、着物の内側から外側に出す。左肩から右腰にわたる上側の着物衿21bもしくは衽端部281bを、第2のベルト16aの先端にある留め具17aで固定する。
【0024】
図5においては着物衿21bを係合する例を図示している。通常の着物においては、着物衿21bと衽28bは互いに縫合され同一平面の布地を形成しているために、第2のベルト16の留め具17aによって着物衿21bもしくは衽28bの端部のいずれを係合しても、係合の効果に大きな差は生じない。図4、図5は、留め具17bによる着物衿21aの固定→お端折り25の形成→留め具17aによる着物衿21bの固定、の順序で着衣するような図の構成になっている。この他にも、お端折り25の形成→留め具17bによる着物衿21aの固定→留め具17aによる着物衿21bの固定、など着衣者の状況判断に応じた着衣順序もあり得る。
【0025】
ここまでの説明を更に人体の断面図を使って繰り返し説明する。図6は着物を着用した人体胴部の、図5にA―A’で示した位置の断面図を上から見たものである。図では、人体、着物用のインナーセット1、着物2のそれぞれ間には隙間が有るが、これは図の見やすさのために間を空けたものであって、実際は隙間なくお互いが密着している。また、図上で力布を厚く描いてあり、第1のベルトが人体に近い側に、また第2のベルトが人体に遠い側に描いてあるのは、図の見やすさを考慮したものでインナーセットの機能上は差が無い。また、着物用のインナーセット1の下に着用する肌儒絆もしくは着物ランジェリーは省略してある。図の上が身体の前で、下が後ろである。
【0026】
胴102の背側に力布12が有り、力布12に取り付けられた第1のベルト13aが右から胴を回り前面に伸びて、左肩から降りてきた(図面の手前から奥の方向)インナーセット衿11bが前面でインナーセット衿11aと交差した結果、右側にあって、留め具14aによって係合している。同様に、第1のベルト13bが左から胴を回り前面に伸びて、右肩から降りてきたインナーセット衿11aが前面でインナーセット衿11bと交差した結果、左側にあって留め具14bによって係合している。
【0027】
着物用のインナーセット1の上に着用した着物2は、見易さのために破線で示してある。力布12に取り付けられた第2のベルト16bが左から胴を回り前面に伸びて、留め具17bによって、着物2の下前と胴102の左前で係合している。着物2は右回りで胴102を包みつつ480度ほど周回して前面の右側に達する。第2のベルト16aが左から胴を回り前面に伸びて、図において矢印で示した位置に有る右の身八口26aを通って着物2の裏側から表側に抜けて前面の右側に出ている。表に出た留め具17aと着物は胴102の右前で出会い、係合される。
【0028】
ここまでは、お端折りを着付けの時に作る普通の着物で説明したが、お端折りを縫製してある簡易着物であっても、同様に本考案のインナーセット1を使って容易に着付けることができる。
【0029】
これで、着物が身体に固定されたので、あとは帯を締めれば着付けが完了する。従来の着付けの手間を大幅に簡略できた。この様な構造で着物用のインナーセットと着物がベルト、インナーセット衿により体に固定され、着用者の腰部、胸部、肩部、首部にかかる固定力が分散されて窮屈さが除かれ、快適になる。

【0030】
なお、実施例1はお端折りを着付けの時に作る普通の着物による説明であった。そのような着物では腰の部分を身体の全周にわたってたくし上げて腰紐で止めるお端折り25を設けることにより、着用者の身長に対して着物の着丈を調整する。
【0031】
それに対して、本実施例は簡易着物を着付ける場合を説明する。簡易着物とは、着用者の身長に対して着物の着丈を予め固定してお端折りを縫製してある着物を指す。これにより、本来のお端折りの機能は不要となるが、従来の着物と外観や着付け性を合わせる意味で、飾りのお端折りを着物の上に縫製する場合がある。このような着物は1枚の平面状の布地で構成する通常の着物と異なり、立体裁断により複数の布地を組み合わせて実現可能である。すなわち、衿、左右の身頃、左右の衽を着用者の体格に合わせたサイズに上下で裁断しておき、お端折りも含めて縫い込んである。この場合には、縫製後に衿と衽が同一平面を形成せず、衿の外側に衽がくるように衿と衽を別平面に二重に形成する場合もある。
【0032】
本実施例の立体裁断による簡易着物においては、図7に示すように、お端折り25が既についているので、お端折りを気にせず着物衿21aまたは衽端部281aを第2のベルト16bで係合すればよい。この後、上前身頃23を閉じて、第2のベルト16aで係合する手順は実施例1と同じである。簡易着物であれば、着付けの時に一番面倒なお端折りを作って丈を調整する必要が無く、本発明によるインナーセット1を着物2の下に着用すれば、着付けが極めて容易になる。さらに、いわゆる作り帯と呼ばれるお太鼓を別に作っておく帯を使用して帯を締めれば、さらに着付けが容易になる。
【0033】
本実施例の立体裁断による簡易着物においては、図8に示すように、お端折り25の前面の一部を削除する構成としてもよい。このように、お端折り25の一部を削除すると、その部分の厚みが減り、留め具で係合し易くなる。また、前面を削除したので腹部の膨らみが減り、すっきりしたスタイルになる利点が有る。このようなお端折りは立体裁断により容易に実現可能であることは先に述べた通りである。
【0034】
図8において、円形で囲んだ部分を拡大して図9に示す。図9は衽28aと第2のベルト16bを留め具17bによって係合している状態の詳細を示したものである。
【0035】
2つの実施例で、また図6で示しているように、ベルトが体を回る角度は着物用のインナーセットで約270度、簡易着物で約180度となり、胃部や腹部にバンドや紐が当たらないことで楽に着られ、着用者が不要な圧迫感を感じないことが着物用のインナーセット及び簡易着物の大きな特徴である。
【0036】
なお、着付けに当たって、先ず本考案のインナーセットを身に付けて、第1ベルトを固定し、その次に着物を着てから第2ベルトを固定するような順序であっても良いし、インナーと着物の2つを同時に身に付けあるいは着て、その後に2組のベルトを固定する順序でも良い。

【産業上の利用可能性】
【0037】
本考案は、和服の着付けを簡便にし、着用感も良くするので、和服の普及に資するものである。

【0038】
1 インナーセット
11 インナーセット衿
12 力布
13a 第1のベルト
13b 第1のベルト
14a 留め具
14b 留め具
15a 長さ調整具
15b 長さ調整具
16a 第2のベルト
16b 第2のベルト
17a 留め具
17b 留め具
18a 長さ調整具
18b 長さ調整具
2 着物
21 着物衿
22 下前身頃
23 上前身頃
24 袖
25 お端折り
26 身八口
27 伊達袖
28a 衽
281a 衽端部
28b 衽
281b 衽端部
101 首
102 胴
103 腕

(57)【要約】

【課題】着物の着用が簡単にでき、着用者に窮屈さを感じさせない着物用のインナーセットを提供する。【解決手段】インナーセット衿11a、11b、インナーセット衿の中央に取り付けた力布、力布に取付けた左右対称な第1および第2のベルト13a、13bからなり、力布が着用者の背中に位置するようにインナーセット衿を首に巻回して、その両端部を第1のベルトの両端部と係合し、その上に着物を着用し、左側の第2のベルトの留め具14bで着物の下前身頃の衽(おくみ)付近を係合し、右側の第2のベルトを身八口を通過させて表に出して、その留め具14aで着物の上前身頃の衽の付近を係合する。


【パテントレビュー】

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