(54)【考案の名称】立坑用ケーシング

(73)【実用新案権者】株式会社エムテック

(72)【考案者】【考案者】

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【選択図】図1

【概要説明】

【分野】

【0001】
この考案は、埋設管の設置などの工事が安全にできる空間を地中に形成するための立坑用ケーシングに関する。

【従来の技術】

【0002】
埋設物を設置する場合、設置する深さまで立坑を掘り、その立坑内で作業が行われる。この作業中に坑内に土砂が崩れ落ちないようにするために、周囲に土留部材を設置する必要がある。簡易立坑を築造する方法として、軽量鋼矢板、ライナープレート等をバックホウでオープン掘削し、順次設置していくが、深くなるにつれて地山の崩壊等が発生しやすくなるので築造が難しく、また、安全上にも問題がある。
【0003】
そこで、あらかじめ円筒状のケーシングを準備し、これを地中に取り付けて土留壁を形成することが考えられる。特許文献1には、ケーシング内を掘り進める作業とケーシングに下向きに押し下げる力を加えることを同時に行うことにより、円形ケーシングを地中に埋めることが記載されている。また、特許文献2や特許文献3には円形ケーシングの下端に切削刃(刃先)が設け、これを回転・揺動させて地中に挿入することが記載されている。さらに特許文献2には、下部に開口部を設けるとともに、この開口部閉鎖する埋め殺し板を取り付け、埋め殺し板に穴を開けて推進管を圧入し、ケーシング回収のときには埋め殺し板を切り離して、ケーシング本体を引き上げることが記載されている。特許文献3にも、ケーシング下端部にスリットを形成し、このスリットを閉塞する閉塞板を着脱自在に取り付けることが記載されいる。
【0004】

【効果】

【0012】
この考案の立坑用ケーシングは、簡単にかつ低コストで地中に設置することができ、安全な立坑の土留壁が形成できる。強度のある円形ケーシングを埋設するため推進工事における反力を考慮せず、推進機の据付ができる。しかも、施工後にすべての部材を回収して再利用でき、地中に障害物を残さない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】立坑用ケーシングを示す正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】スリット閉鎖部材を示す正面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】止水パッキンを示す正面図である。
【図6】上縁保護部材を示す正面図である。
【図7】立坑用ケーシングの設置作業の初期状態を示す断面図である。
【図8】立坑用ケーシングの設置作業が進行した状態を示す断面図である。
【図9】横管を推進する状態を示す断面図である。
【図10】同平面図である。

【0014】
この考案を実施するための形態について図面に基づいて説明する。図1は立坑用ケーシングを示す正面図、図2は同平面図である。立坑用ケーシング1は、円筒状のケーシング本体2と、ケーシング本体2の下端から側面に設けられた横管用スリット3と、ケーシング本体2の横管用スリット3に着脱自在に取り付けられたスリット閉鎖部材4とを有する。本例では、さらに、ケーシング本体2と同径の円筒状でケーシング本体2の上に着脱自在に取り付ける延長ケーシング10が備えられている。
【0015】
ケーシング本体2はこの考案の立坑用ケーシングの主要な部分を構成する部材であり、鋼板などの強度のある素材で形成する。その径は施工に必要な空間に合わせて選択されるが、主に直径が1360〜3500mm程度のものが特に有用である。例えば、厚さを9〜16mmとし、ここでは12mmを選択した。
【0016】
ケーシング本体2の高さも築造される立坑に合わせて選択される。この深さをケーシング本体2のみでカバーしてもよいが、本例のように複数の延長ケーシング10を組み合わせるようにしてもよい。このとき、延長ケーシング10は高さの異なる複数のものを準備すると、その組み合わせによりさまざまな深さの施工に対応することができる。たとえば、内径1566mmの場合、ケーシング本体2の高さは1500mm程度とし、延長ケーシング10として200mm、300mm、400mm、500mm、600mm、700mmの各種の高さをのものを揃えることにより、必要な深さの施工のほとんどをカバーすることができる。
【0017】
ケーシング本体2および延長ケーシング10は円筒状の部材であり、図1の例では一体の部材として形成している。しかし、この部材は高さ方向に沿って分割してもよく、たとえば、その接続部分を管の内側からボルトで留めて円筒状に連結する。径の大きなケーシングの場合、分割することによって運搬が容易になり、また施工後の引き上げも行いやすくなる。
【0018】
横管用スリット3はケーシング本体2の側面に設けられており、下端から横管設置高さまで形成されている。この図の例では横管用スリット3は矩形である。
【0019】
スリット閉鎖部材について説明する。図3はスリット閉鎖部材を示す正面図、図4は同平面図である。スリット閉鎖部材4は横管用スリット3の長さ方向、すなわち、ケーシング本体2の高さ方向に沿って分割されており、ボルト等の連結部材で連結・分離が可能である。連結された状態ではケーシング本体2の内面にそった曲面を有するシェルであり、横管用スリット3を覆う形状になっている。その上部には横管を通すための穴5があいた状態になる。左右に分割された2つの部材4a,4bは、連結部において若干の幅で重なっており、この重なり部に曲面の内側からボルト7が取り付けられる。また、分割されたそれぞれの部材4a,4bには半円状の横管挿入用切り欠き部5a,5bが設けられていて、この2つの部材4a,4bを連結したときに横管を通すための円形の穴5が形成される。この穴5の位置には、止水パッキン6を取り付けることができる。図5は、止水パッキンを示す正面図である。リング状のゴム板であり、設置する横管の断面よりやや小さい径の穴があいている。この止水パッキン6を通して横管を設置することにより、横管とスリット閉鎖部材4の間の隙間がなくなり、安全に施工することができる。なお、スリット閉鎖部材4として、横管挿入用切り欠き部5a,5bの半円の径が異なるものを複数用意することが好ましい。これにより、横管の径に合った横管挿入用切り欠き部5a,5bのスリット閉鎖部材4を選択することにより、同じケーシング本体2を使用してさまざまな横管に対応することができる。この場合、止水パッキン6もそれぞれの径に合ったものを用意することになる。
【0020】
スリット閉鎖部材4の周囲にはボルト通し穴7が設けられており、ケーシング本体2に着脱できる。ボルトの着脱は曲面の内側から行う。スリット閉鎖部材4がケーシング本体2に取り付けられたとき、スリット閉鎖部材4の下端はケーシング本体2の下端の位置になる。
【0021】
ケーシング本体2および延長ケーシング10の上縁には吊り下げ用の穴8が設けられている。この吊り下げ用の穴8にワイヤー等を通すことにより吊り下げることができる。また、ケーシング本体2や延長ケーシング10の上縁には上縁保護部材9を取り付けることができる。図6は上縁保護部材を示す正面図である。上縁保護部材9は打撃等の衝撃の緩衝部材であり、上部には衝撃に耐える強度の上板があり、その左右には側板が下向きに設けられていて、概ねコの字状の断面形状を有する。
【0022】
次に、この立坑用ケーシングの使用方法について、埋設管設置工法の例に基いて説明する。図7は立坑用ケーシングの設置作業の初期状態を示す断面図である。この考案の立坑用ケーシングおよび埋設管設置工法では、回転揺動させるような特殊な装置を使うことなく、汎用の工事用機械で実施することができる。本例では、バックホウと呼ばれるタイプの油圧ショベル11を使用する。
【0023】
まず、施工場所に油圧ショベル11で予備穴xを掘る。掘削長が短かったり、崩れにくい地盤であればそのまま掘り進めればよいが、一定の深さになれば周囲の土砂が崩れ始めるので、掘削を止めて予備穴xの中に立坑用ケーシングを設置する。このとき、スリット閉鎖部材4はケーシング本体2に取り付けておく。ケーシング本体2がある程度まで予備穴xに入っている場合は、その上に延長ケーシング10を接続してもよい。さらに、ケーシング本体2または延長ケーシング10の上縁に上縁保護部材9を取り付ける。上縁保護部材9は略コの字の断面であるので、上縁に載せることにより簡単に取り付けることができる。
【0024】
ついで、油圧ショベル11でケーシング本体2の内部を掘り進める。これにより穴xはさらに深くなり、ケーシング本体2が下に進んでいく。図8は立坑用ケーシングの設置作業が進行した状態を示す断面図である。ケーシング本体2が所定の深さまで下がったらケーシング本体2の上に延長ケーシング10を順次接続しながら、最終的な深さまで掘り進める。
【0025】
固い土砂や石などによりケーシング本体内部の掘削だけではケーシング本体2が下がらないときは、油圧ショベル11により押したり打撃を加えることができる。ケーシング本体2または延長ケーシング10の上縁に取り付けた上縁保護部材9を油圧ショベル11のバケット12等で押したり打ち付けることにより、ケーシング本体2の下降が進行する。上縁保護部材9を緩衝材として取り付けることにより、ケーシング本体2の損傷が防止される。
【0026】
立坑用ケーシング1を予定の深さまで挿入したら、立坑用ケーシング1と穴の間に土を埋め戻す。こうして、安全な立坑が簡単に築造される。立坑用ケーシング1の側壁は、そのまま堅固な土留壁となる。高さの異なる複数の延長ケーシング10を組み合わせることにより、どのような深さの立坑であっても、上縁が地上に突出しないように適切な状態に設置できる。
【0027】
立坑が完成したら、中に入って必要な工事を行う。図9は横管を推進する状態を示す断面図、図10は同平面図である。まず、底盤を作る。たとえば、200mmほどの厚さのコンクリート層を形成する。そして、この強化された底盤に推進機13を設置する。このような推進機13はすでに広く使用されている。管の外周を把持するチャックを備えており、このチャックを押し出すことにより横管を地中に挿入する。横管yの位置をスリット閉鎖部材4の穴に合わせ、この穴を通して送り出す。横管yの設置においては通常は、まずパイロット管と呼ばれる太い管を打ち込み、ついで、下水管など本来の管をパイロット管の中に通す。図9はパイロット管を推進している状態を示している。本考案では、強度のある円形ケーシングを埋設するため推進工事における反力を考慮せず、推進機の据付ができる。
【0028】
横管yの先端はスリット閉鎖部材4の穴を通過するときに、そこに取り付けている止水パッキンに当たる。止水パッキンの穴の外周を地中に向かって押し出しながら横管yの先端は進行する。やがて、止水パッキンの穴は広げられ、横管yの先端は止水パッキンを通過して、地中を進行していく。横管yの側壁とスリット閉鎖部材4の間は止水パッキンにより密封されるので、作業の間、土砂や地下水が立坑の内部に進入するのが防止される。
【0029】
工事には一定の期間を有することが多く、夜間などにおいて作業が中断される。このとき、立坑の上に鋼板などの蓋を置くことにより、立坑の上を車などが通行できるようになる。
【0030】
立坑内の作業が終了したら、資材の撤去を行う。まず、推進機などの機材を撤去する。ついで、立坑用ケーシングの回収を行う。
【0031】
底盤のコンクリートを壊し、立坑用ケーシングの下端を底盤から切り離す。さらに、スリット閉鎖部材4を取り外す。外周部のボルトをケーシング内から外すことにより、スリット閉鎖部材4とケーシング本体2を切り離すことができる。さらに、左右の部材4a,4b同士を連結しているボルトもケーシング内から外すことができる。こうして、分離されたスリット閉鎖部材4は横管yに干渉することなく簡単に取り外し、回収することができる。
【0032】
ついで、立坑内に土砂を戻し、転圧を行いながらケーシング内部を埋め戻していく。それから、立坑用ケーシング1を真上に引き上げて、地中から引き抜く。スリット閉鎖部材4は全て取り外されているので、横管用スリット3は開放されている。この横管用スリット3により横管yに干渉することなく、簡単に立坑用ケーシング1を回収できる。こうして、スリット閉鎖部材4を含め全ての資材を回収し、再使用することができるので、資源の有効活用ができる。不要な部材を地中に残さないので、後日、別の工事を同じ場所で行うときも、悪影響はない。
【0033】
以上、推進工事における発進坑の例で説明したが、本考案の立坑用ケーシングは到着坑側でも使用できる。この場合、発進坑より送られてきた横管は、スリット閉鎖部材4の穴5を通って、立坑内に進入する。その後は発進坑の場合と同様に、スリット閉鎖部材4を横管から取り外すことができる。又、推進工事以外にも開削工事、埋設物設置工事等幅広く使用することが可能である。
【0034】
1.立坑用ケーシング
2.ケーシング本体
3.横管用スリット
4.スリット閉鎖部材
5.横管挿入用穴
5a,5b 横管挿入用切り欠き部
6.止水パッキン
7.ボルト通し穴
8.吊り下げ用の穴
9.上縁保護部材
10.延長ケーシング
11.油圧ショベル
12.バケット
13.推進機
x.予備穴
y.横管

(57)【要約】

【課題】強度のある安全な立坑の土留壁が簡便かつ低コストで形成でき、しかも、資材を地中に残さず回収できる立坑用ケーシングを提供する。【解決手段】立坑用ケーシング1は、円筒状のケーシング本体2と、ケーシング本体の下端から側面に設けられた横管用スリット3と、横管用スリットに着脱自在に取り付けられたスリット閉鎖部材4とを有し、スリット閉鎖部材は横管用スリットの長さ方向に沿って分割されており、分割されたそれぞれの部材4a、4bには半円状の横管挿入用切り欠き部5a、5bが設けられている。


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