(54)【考案の名称】一体型フローティングシール

(73)【実用新案権者】イーグル工業株式会社

(72)【考案者】【考案者】

[fig000002]
【選択図】図1

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は、建設機械、農業機械分野で使用される一体型フローティングシールに関し、特に、懸架装置などに適用される一体型フローティングシールに関する。

【従来の技術】

【0002】
従来、フローティングシールは、軸部材に固定された環状の固定側ハウジングと、軸部材に対して同軸で回転する環状の回転側ハウジングとの間の軸方向の隙間を封止するものであり、同一構成である2つのフローティングシールを一組のシールセットとし、これらが互いに摺動可能に軸部材に取り付けられている。具体的には、図4に示すように、フローティングシール100は、軸部材300との間に隙間を設けて取り付けられた断面略L字型の金属環101と、該金属環の外周側に設けられ、軸部材300の径方向外方に延出する弾性環102とを備えている。
【0003】
金属環101は、軸部材300と同軸で配置され且つ該軸部材の外周面との間に環状隙間を設けて取り付けられた筒状部101Aと、該筒状部と一体成形され、軸部材300の径方向外方に延出したフランジ部101Bとを有している。弾性環102は、その内周部102Aが筒状部101Aの外周面101aに所定の締め代にて嵌着されており、外周部102Bには、固定側ハウジング或いは回転側ハウジングの内周面に圧接される外周面102aが設けられている。
【0004】
上記のように構成されるフローティングシール100を使用する際には、図5(a)に示すように、先ず一組のフローティングシールのうち一方のフローティングシール100Aを、回転側ハウジング400の内周面400aに密着させる。次に、他方のフローティンブシール100Bを、フローティングシール100Aと反対向きで固定側ハウジング500の内周面500aに密着させる(図5(b))。その後、回転側ハウジング400と回転側ハウジング500を近接させて、フローティングシール100A,100Bにおけるそれぞれのフランジ部の軸方向端面100b,100b同士を当接させ、更に、これらを互いに押圧することにより、フローティングシール100A,100Bが位置決めされる(図5(c))。そして、回転側ハウジング400の回転に伴ってフローティングシール100Aが回転すると、フローティングシール100Aの軸方向端面100bとフローティングシール100Bの軸方向端面100bとの間で摺動面Sが形成され、これにより回転側ハウジング400と固定側ハウジング500の間のシール性が確保される。
【考案が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、装着時に、2つのフローティングシールのうち一方を回転側ハウジングに装着し、その後他方を固定側ハウジングに装着し、次いで固定側ハウジングと回転側ハウジングを近接させることで2つのフローティングシールを当接させている。すなわち、各フローティングシールを固定側ハウジング或いは回転側ハウジングに個別に装着する必要があり、作業工数が多く、取付作業が煩雑である。また、2つのフローティングシールの当接面が露出して外気と接触しているため、取付作業時などに埃や泥水などの異物が付着し易く、これら当接面同士が摺動する際、摺動面に傷が生じ易く、良好なシール性を実現することができないという問題がある。
【0006】
本考案の目的は、装着時の作業工数を低減して簡単な取付作業を実現することができ、加えて良好なシール性を実現することができる一体型フローティングシールを提供することにある。

【効果】

【0014】
本考案によれば、第1シールリングの金属環と第2シールリングの金属環との摺動面に、金属環同士を分離可能に固定する固定部が設けられている。そして取付作業時には、第1シールリングの金属環と第2シールリングの金属環とが固定部を介して固定されており、取付作業後の第2シールリングの回転時に、金属環同士が分離する。すなわち、取付作業時には、第1シールリングと第2シールリングとが一体であるため、第1,第2シールリングのいずれか一方をハウジングに装着することにより、一体型フローティングシールの取付作業が完了する。したがって、他方のシールリングの装着作業を行う必要がなく、装着時の作業工数を低減して簡単な取付作業を実現することが可能となる。また、第1シールリングの金属環と第2シールリングの金属環との摺動面に固定部が設けられているため、取付作業時に摺動面が露出しておらず、埃や泥水などの異物が当該摺動面に付着し難い。よって、異物の噛み込みによる摺動面での傷の発生を防止することができ、良好なシール性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本考案の実施形態に係る一体型フローティングシールの構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は2つのフローティングシール間の摺動面の拡大断面図である。
【図2】図1の一体型フローティングシールが固定側ハウジング及び回転側ハウジングに取り付けられた状態を示す断面図である。
【図3】図1の一体型フローティングシールの取付作業工程を説明する断面図である。
【図4】従来のフローティングシールの構成を示す断面図である。
【図5】従来のフローティングシールの取付作業工程を説明する断面図である。

【0016】
以下、本考案の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本考案の実施形態に係る一体型フローティングシールの構成を概略的に示す図であり、図2は、図1の一体型フローティングシールが固定側ハウジング及び回転側ハウジングに取り付けられた状態を示す断面図である。図1,2の一体型フローティングシールは、建設機械や農業機械の各部位に使用され、固定側ハウジングと回転側ハウジングとの間でシールすることを目的として軸に装着される。なお、図1,2の一体型フローティングシールは、その一例を示すものであり、本考案に係る一体型フローティングシールの構成は、図1,2のものに限られないものとする。
【0018】
一体型フローティングシール1は、軸部材30と固定側ハウジング40との間に設けられるシールリング1A(第1シールリング)と、軸部材30と回転側ハウジング50との間に設けられ、シールリング1Aと摺動するシールリング1B(第2シールリング)とを備えている。シールリング1Aは、固定側ハウジング40側に配置されると共に軸部材30に固定されており(図2)、一方、シールリング1Bは、回転側ハウジング50に配置されると共に軸部材30に対して回転可能に取り付けられている。このように一体型フローティングシール1を固定側ハウジング40及び回転側ハウジング50に装着することにより、これらハウジング間に生じる隙間から埃や泥水などの異物が侵入するのを防止することが可能となっている。シールリング1A、シールリング1B及び軸部材30で画定される空間には、オイルなどの潤滑油が封入されている。
【0019】
シールリング1Aは、図1(b)に示すように、軸部材30との間に隙間を設けて取り付けられる金属環10Aと、該金属環の外周部に設けられ、軸部材30の径方向外方に延出する弾性環20Aとを有している。また、シールリング1Bは、軸部材30との間に隙間を設けて取り付けられる金属環10Bと、該金属環の外周部に設けられ、軸部材30の径方向外方に延出する弾性環20Bとを有している。すなわち、本実施形態ではシールリング1A,1Bの構成は同一であり、互いに反対向きで軸部材30に配置されている点が異なる。
【0020】
弾性環20Aの内周部21Aは、筒状部11Aの外周面11aに所定の締め代にて嵌着されており、外周部22Aには、固定側ハウジング40の内周面40aに圧接される外周面23aが設けられている。同様に、弾性環20Bの内周部21Bは、筒状部11Bの外周面11bに所定の締め代にて嵌着されており、外周部22Bには、回転側ハウジング50の内周面50aに圧接される外周面23bが設けられている。
【0021】
そして本考案では、図1(c)に示すように、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとの摺動面Sに、金属環10A,10B同士を分離可能に固定する固定部2が設けられている。よって、取付作業時にはシールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとが固定部2を介して固定されており、シールリング1A,1Bが一体化されている。また、取付作業の完了後、シールリング1Bがシールリング1Aに対して回転する際に、シールリング1Bに加えられる外力等によって金属環10A,10Bが分離し、摺動面Sで互いに摺動する。この固定部2は、摺動面Sの一部に設けられてもよいし、摺動面Sの全部に設けられてもよい。
【0022】
金属環10Aは、具体的には、軸部材30と同軸で配置され且つ該軸部材の外周面との間に環状隙間を設けて取り付けられた筒状部11Aと、該筒状部と一体成形され、軸部材30の径方向外方に延出したフランジ部12Aとを有している。金属環10Bも同様に、軸部材30と同軸で配置され且つ該軸部材の外周面との間に環状隙間を設けて取り付けられた筒状部11Bと、該筒状部と一体成形され、軸部材30の径方向外方に延出したフランジ部12Bとを有している。
【0023】
フランジ部12Aは、フランジ部12Bと対向する側の面に、軸部材30の軸方向に対して垂直に設けられた垂直面13Aを有している(図1(c))。またフランジ部12Bも同様に、フランジ部12Aと対向する側の面に、軸部材30の軸方向に対して垂直に設けられた垂直面13Bを有している。そして、シールリング1Bの垂直面13Bが前シールリング1Aの垂直面13Aと摺動することによって、摺動面Sが形成される。このシールリング1Aのフランジ部12Aとシールリング1Bのフランジ部12Bとの摺動面Sに、固定部2が設けられている。なお説明の便宜上、図1(c)では、フランジ部12Aの垂直面13Aとフランジ部12Bの垂直面13Bとの間に隙間を設け、当該隙間の全体に固定部2が介在する状態を示したが、実際には垂直面13A,13B間の隙間は非常に微小であり、図示するものに限られない。また、垂直面13A,13B間の微小隙間には、シールリング1A,1Bを共に固定するのに十分な量の固定部2が介在している。
【0024】
フランジ部12Aは、更に、フランジ部12Bと対向する側の面に、垂直面13Aの径方向内方に設けられ且つ垂直面13Aに対して傾斜したテーパ面14Aを有している(図1(c))。フランジ部12Bも同様に、フランジ部12Aと対向する側の面に、垂直面13Bの径方向内方に設けられ且つ垂直面13Bに対して傾斜したテーパ面14Bを有している。そして、シールリング1Aのテーパ面14Aとシールリング1Bのテーパ面14Bとの間に、摺動面Sに向かって間隔が小さくなる溝15が形成されている。すなわち、溝15は径方向外方に向かって先細り形状となっており、その径方向外方端部に摺動面Sが形成されている。被装着体の動作時には、回転側ハウジング50の回転に伴う遠心力により、シールリング1A、シールリング1B及び軸部材30で確定される空間に充填された潤滑油が溝15から摺動面Sに供給される。このとき、溝15が先細り形状となっていることから、当該潤滑油が粘度や表面張力によって溝15の径方向外方端部と摺動面との境界部に保持され、この結果、摺動面Sにより多くの潤滑油を供給することが可能となる。
【0025】
固定部2は、被装着体である固定側ハウジング40や回転側ハウジング50の動作が開始されるまではシールリング1A,1Bを一体化することができ、被装着体の動作時にはシールリング1A,1Bを分離することができる機能・作用を有する材料である。例えば、固定部2は、粘着性を有する潤滑用組成物からなり、好ましくは高粘度で吸着性を有する潤滑油や、あるいはグリースなどが挙げられる。潤滑油の場合、VG 150以上が好ましく、グリースの場合、ちょう度がJIS 2号(又はNLGI No.2)以上であるのが好ましい。この場合、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとが上記潤滑用組成物を介して一体的に粘着される。そしてシールリング1Bの回転時には、固定部2に加えられる外力によって当該固定部が流動性を示し(粘性低下)、これにより、2つの金属環10A,10Bが離間して互いに摺動すると共に、潤滑用組成物によって摺動面Sに潤滑性が付与される。
また、固定部2は、潤滑用組成物以外に、接着剤からなるものであってもよい。この場合、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとが上記接着剤を介して接着される。そして、シールリング1Bの回転時には、固定部2に加えられる外力によって当該固定部の接着力が失われ、2つの金属環10A,10Bが剥離して互いに摺動する。
【0026】
上記のように構成される一体型フローティングシール1を装着する際には、図3(a)に示すように、回転側ハウジング50の内周面50aに弾性環20Bの外周面23bを密着させ、シールリング1Bを回転側ハウジング50に取り付ける。このとき、弾性環20Bで生じる弾性力によって金属環10Bが軸方向及び径方向に位置決めされ、シールリング1Bが軸部材30と回転側ハウジング50との間で固定される。また、シールリング1Aとシールリング1Bが固定部2を介して一体化されているため、シールリング1Aもシールリング1Bを介して回転側ハウジング50に固定される。よって上記作業のみでフローティングシールの装着が完了する。
【0027】
次いで、固定側ハウジング40を回転側ハウジング50に近接させて、固定側ハウジング40の内周面40aにシールリング1Aの外周面23aを密着させる。このとき、弾性環20Aで生じる弾性力によって金属環10Aが固定側ハウジング40内で軸方向及び径方向に位置決めされる。これにより、一体型フローティングシール1全体が位置決めされ、取付作業が完了する。
【0028】
被装着体の作動時には、回転側ハウジング50の回転に伴ってシールリング1Bがシールリング1Aに対して回転し、また当該回転によってシールリング1A,1Bが変形する。この結果、固定部2によって一体化されていたフランジ部12A,12Bが分離され、フランジ部12Aの垂直面13Aとフランジ部12Bの垂直面13B間に摺動面Sが形成され、この摺動面Sによって回転側ハウジング50と固定側ハウジング40の間のシール性が確保される。
【0029】
上述したように、本実施形態によれば、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとの摺動面Sに、金属環10A,10B同士を分離可能に固定する固定部が設けられている。そして取付作業時には、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとが固定部2を介して固定されており、取付作業後のシールリング1Bの回転時に、金属環10A,10B同士が分離する。すなわち、取付作業時には、シールリング1Aとシールリング1Bとが一体であるため、一方のシールリング1Bをハウジングに装着することにより、一体型フローティングシール1の取付作業が完了する。したがって、他方のシールリング1Aの装着作業を行う必要がなく、装着時の作業工数を低減して簡単な取付作業を実現することが可能となる。また、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとの摺動面Sに固定部2が設けられているため、取付作業時に摺動面Sが露出しておらず、埃や泥水などの異物が当該摺動面に付着し難い。よって、異物の噛み込みによる摺動面での傷の発生を防止することができ、良好なシール性を実現することが可能となる。
【0030】
また、固定部2が高粘度で粘着性を有する潤滑用組成物からなる場合、シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとが上記潤滑用組成物を介して一体的に粘着される。そして、シールリング1Bの回転時に2つの金属環10A,10Bが離間して摺動面Sが形成される際、上記潤滑用組成物により、摺動面Sで生じる摩擦力を更に低減することが可能となる。
【0031】
特に、一体型フローティングシール1を建設・農業機械の懸架装置に取り付けることにより、埃や泥水などの異物が当該摺動面に付着或いは侵入するのを防止することができ、良好なシール性を実現することができる。
【0032】
以上、上記実施形態に係る一体型フローティングシールについて述べたが、本考案は記述の実施形態に限定されるものではなく、本考案の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0033】
例えば上記実施形態では、シールリング1A,1Bの構成は同一であるが、これに限らず、シールリング1A,1Bが異なる構成であってもよく、また、シールリング1A,1Bの形状が異なってもよい。
【0034】
また、金属環10A,10Bの断面形状は、それぞれ略L字型であるが、互いに摺動することによって摺動面を形成しうる形状であれば、他の形状であってもよい。
【0035】
また、弾性環20A,20Bの断面形状は、略並行四辺形であるが、真円や楕円を含む略円形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本考案の一体型フローティングシールは、建設機械、農業機械の懸架装置、コンベヤ装置、減速機、車両などの軸に好適に用いられ、特にトラックローラ、走行減速機、アイドラ等に適用されるフローティングシールとして極めて有用である。
【0037】
1 一体型フローティングシール
1A シールリング
1B シールリング
2 固定部
10A 金属環
10B 金属環
11A 筒状部
11a 外周面
11B 筒状部
12A フランジ部
12B フランジ部
13A 垂直面
13B 垂直面
14A テーパ面
14B テーパ面
15 溝
20A 弾性環
20B 弾性環
21A 内周部
22A 外周部
23a 外周面
S 摺動面
30 軸部材
40 固定側ハウジング
50 回転側ハウジング
50a 内周面

(57)【要約】

【課題】装着時の作業工数を低減して簡単な取付作業を実現することができ、加えて良好なシール性を実現することができる一体型フローティングシールを提供する。【解決手段】一体型フローティングシール1は、軸部材30と固定側ハウジングとの間に設けられるシールリング1Aと、軸部材30と回転側ハウジングとの間に設けられ、シールリング1Aと摺動するシールリング1Bとを備える。金属環10A,10Bは、それぞれ軸部材30と同軸で配置され且つ軸部材の外周面との間に環状隙間を設けて取り付けられた筒状部11A,11Bと、筒状部と一体成形され、軸部材の径方向外方に延出したフランジ部12A,12Bとを有する。シールリング1Aの金属環10Aとシールリング1Bの金属環10Bとの摺動面Sには、金属環同士を分離可能に固定する粘着性を有する潤滑用組成物からなる固定部2が設けられる。


【パテントレビュー】

あなたの意見を伝えましょう:


【インターネット特許番号リンク】

インターネット上にあるこの特許番号にリンクします(発見しだい自動作成):