(54)【考案の名称】シール装置

(73)【実用新案権者】イーグル工業株式会社

(72)【考案者】【考案者】

[fig000002]
【選択図】図2

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は、軸孔を有するハウジングと、このハウジングの軸孔に嵌装された回転軸との間をシールして、密封空間内に収容されている被密封流体の、大気側への漏洩を防止するシール装置に関する。

【従来の技術】

【0002】
従来のシール装置としては、例えば、自動車の空調装置等における圧縮機の回転軸周りをシールするために用いられ、回転軸の外周面に摺接されるシールリング部材によって、密封空間の密封状態を維持するシール装置が知られている。このようなシール装置を構成するシールリング部材は、密封性に優れたゴム等のエラストマ材料からなり、シールリング部材の先端にあるシールリップ部と回転軸の外周面とが常に接触するように構成され、密封対象となる圧縮機の機内空間内に充填された被密封流体である冷媒ガスや潤滑油を密封して、機内空間を密封空間とし、被密封流体が機内空間から外部へ漏洩することを防止している。
【0003】
従来のシール装置は、図1に部分的に示すように、第1シールリング部材100と、この第1シールリング部材100の、密封空間側とは反対側の背面側に位置する第1バックアップリング部材200とを具えている。第1シールリング部材100は、回転軸900(図1では、回転軸900の外周面位置を二点鎖線で示す。)の外周側に同心で円筒状に形成された第1円筒部110、回転軸900の外周面と摺接可能な第1シールリップ部130、および第1円筒部110および第1シールリップ部130の間を連結し、密封空間側とは反対側に位置する背面の形状が略円弧状に形成されている第1湾曲部120を有する。また、第1バックアップリング部材200は、第1円筒部110の背面に密接して延びる第2円筒部210、およびこの第2円筒部210から第1湾曲部120の背面120aに対応させて湾曲させた第2湾曲部220を有している。
【0004】
図1に示す第1シールリング部材100の構成では、被密封流体圧が、第1シールリング部材100の、密封空間側の表面に加わる場合、第1シールリング部材100は、密封空間側から大気側へと押圧され、第1湾曲部120の、特に背面120aの略円弧状の部分が、第1バックアップリング部材200の第2湾曲部220の先端部220a、特に先端角部230と接触し、先端角部230が第1湾曲部120の背面120aに食い込みやすい。この食い込み状態が長時間継続的に生じたり、あるいは断続的に繰返し生じた場合には、第1湾曲部120の食い込み位置に亀裂が生じ、この亀裂が第1湾曲部120の厚さ方向に伝播していって、最終的には第1シールリング部材100を損傷させるおそれがあり、第1シールリング部材100が損傷すると、密封空間と大気との間での密封状態が維持できなくなるという問題がある。
【考案が解決しようとする課題】
【0005】
本考案の目的は、第1バックアップリング部材の先端部位置の適正化を図ることによって、第1シールリング部材が損傷するのを有効に抑制しつつ、被密封流体圧が作用する第1シールリング部材を、背面側から長期間にわたって安定支持することが可能なシール装置を提供することにある。

【効果】

【0010】
本考案によれば、第1バックアップリング部材の第2湾曲部が、エラストマ製の第1シールリング部材の第1湾曲部の背面の最内径位置よりも内径を減じる方向に延長した先端部を有することにより、第1シールリング部材が損傷するのを有効に抑制しつつ、被密封流体圧が作用する第1シールリング部材を、背面側から長期間にわたって安定支持することが可能なシール装置の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、従来のシール装置における、第1シールリング部材の第1湾曲部と、第1バックアップリング部材の第2湾曲部との相互位置関係を説明するために拡大して示した部分断面図である。
【図2】図2は、本考案のシール装置の半断面図であって、ハウジングの軸孔に嵌装されたときの回転軸の配設位置を仮想線で示す。
【図3】図3は、図2に示す四角で囲んだ領域Sの部分だけを抜き出して拡大して示した部分断面図である。

【0012】
次に、本考案の実施形態について図面を参照しながら以下で説明する。
【0013】
図2は、本考案に従うシール装置1の縦断面を半部だけ示したものであり、図3は、図2に示す四角で囲んだ領域Sの部分だけを抜き出して拡大して示したものである。
【0014】
図2に示すシール装置1は、主に、第1シールリング部材10と、第1バックアップリング部材20とを具えている。
【0015】
第1シールリング部材10は、エラストマ製であり、回転軸90の外周側に、回転軸90と同心で円筒状に形成された第1円筒部11と、回転軸90の外周面と摺接可能な第1シールリップ部13と、第1円筒部11および第1シールリップ部13の間を連結し、密封空間Xとは反対側の大気Y側を向いている背面12aが略円弧状に形成されている第1湾曲部12とを有する。また、図2に示す第1シールリング部材10は、第1円筒部11の、第1湾曲部12と連結される端部とは反対側に位置する端部に連結され、径方向外側に延在する第1厚肉基部14をさらに有する。回転軸90の外周面に接触する第1シールリップ部13の先端部は、回転軸90に向かって密封空間X側に傾斜して延在し、回転軸線91を中心に回転する回転軸90の外周面に対し、低接触抵抗になるように小接触面積で緊密接触するように弾性変形し、回転軸90の外周面に対する第1シールリップ部13の先端部の面圧を高めることによって、シール機能を発揮し、密封空間Xから大気Y側への被密封流体の漏洩を防ぐことができる。
【0016】
第1バックアップリング部材20は、金属製であり、第1シールリング部材10の背面側に位置し、第1円筒部11の背面に密接して延びる第2円筒部21と、この第2円筒部21から延び、第1湾曲部12の背面に対応させて湾曲させた第2湾曲部22とを有している。第1バックアップリング部材20は、鋼板等の金属板からなり、密封空間X内の被密封流体圧による第1シールリング部材10を背面から支持してその変形を制限するために設けられたものである。第1バックアップリング部材20の第2湾曲部22は、径方向内側に延びる先端部22aを有する。また、図1に示す第1バックアップリング部材20は、第2円筒部21の、大気Y側の端から径方向外側に向かって延びる第1フランジ基部24をさらに有する。第1バックアップリング部材20は、第1フランジ基部24において、第1シールリング部材10と、後述する樹脂製の第2シールリング部材30との間で挟持されている。
【0017】
さらに、図2に示すシール装置1は、シール装置1の内周部と、回転軸90の外周面との間におけるシール性をより一層高める観点から、第1バックアップリング部材20の背面側に位置し、回転軸90の外周面と摺接可能な第2シールリップ部32を有する樹脂製の第2シールリング部材30を具えた実施形態の例を示している。この第2シールリング部材30は、第1シールリング部材10の第1厚肉基部14および第1バックアップリング部材20の第1フランジ基部24の背面に密着して配置される環状の第2フランジ基部31と、この第2フランジ基部31から回転軸90に向かって密封空間X側に傾斜して延在する第2シールリップ部32とで構成されている。第2シールリング部材30は、シール装置1が装着されたハウジング80の軸孔81に回転軸90が嵌装されると、第1シールリング部材10の第1シールリップ部13と同様に、弾性変形して、回転軸90の外周面に摺接可能に密接した状態になる。第2シールリング部材30の材質としては、特に規定しないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の低摩擦性の合成樹脂材料を用いることが好ましい。
【0018】
さらにまた、図2に示すシール装置1では、回転軸90の外周面との間におけるシール性をさらに高めるため、第2シールリング部材30の背面側に位置し、第2シールリング部材30を支持する金属製の第2バックアップリング部材40をさらに具える。
【0019】
図2は、シール装置1が、第2バックアップリング部材40の背面側に、さらにシール装置1をハウジング80の内周から外側へ引き抜いて取り外す際に引き抜き用治具を引っ掛けるためのプルリング41を具えている実施形態の例を示している。
【0020】
また、図2に示すシール装置1は、第1シールリング部材10、第1バックアップリング部材20、第2シールリング部材30および第2バックアップリング部材40を収容する筒状ケース70をさらに具えている場合を示しており、この筒状ケース70は、外周側に、軸孔81の内周面82と密接する弾性変形可能なOリング60を装着するための環状凹部71を有する。これにより、シール装置1の外周部と、ハウジング80の内周面との間のシール性を確保することができる。環状凹部71は、筒状ケース70の密封空間X側の端部に形成され、筒状ケース70の大気Y側の端部には、半径方向内側に折り曲げられたカシメ部73が設けられていて、さらに、筒状ケース70は、環状凹部71とカシメ部73との間を連結し、回転軸90と同心で円筒状に形成された第3円筒部72を有している。加えて、筒状ケース70は、環状凹部71とカシメ部73との間に、第1シールリング部材10、第1バックアップリング部材20、第2シールリング部材30および第2バックアップリング部材40を、互いに密接させた収容状態で、環状凹部71に取り付けられたOリング60を介してハウジング80の軸孔81に圧入装着可能に構成されている。Oリング60の外径は、図2では筒状ケース70の最大外径よりも多少大きく設定されているが、Oリング60は、シール装置1をハウジング80の軸孔81に嵌装すると、筒状ケース70の外周面と略同一径にまで弾性変形して密着固定される。
【0021】
また、図2に示すシール装置1は、第1シールリング部材10の、特に第1厚肉基部14の内部に、補強環50が埋設されていて、これにより、シール装置1の嵌装時における第1厚肉基部14の形状を保持して、シール装置1のより緊密な嵌装を行なうことができる。
【0022】
そして本考案の構成上の主な特徴は、図3に示すように、第1シールリング部材10の第1湾曲部12の背面に対する、第1バックアップリング20の第2湾曲部22の先端部22aの位置Q1の適正化を図ることにあり、より具体的には、第1バックアップリング部材20の第2湾曲部22が、第1シールリング部材10の第1湾曲部12の背面12aの最内径位置P1よりも内径を減じる方向に延長した先端部22aを有することにあり、この構成を採用することによって、第1シールリング部材10が、被密封流体により加圧されて、大気Y側に押し込まれた場合でも、金属製の第1バックアップリング部材20の第2湾曲部22の先端部22aの先端角部23が、エラストマ製の第1シールリング部材10の第1湾曲部12の背面12aに接触して食い込む現象が生じることがなくなる結果、第1シールリング部材10の損傷を回避することができる。
【0023】
第1シールリング部材10の第1湾曲部12の背面12aの最内径位置P1と、第1バックアップリング20の第2湾曲部22の先端部22aの位置Q1との関係は、図3に示すように、第1湾曲部12の背面12aの最内径位置P1での内径をD1、第2湾曲部22の先端部22aの位置Qでの内径をD2とするとき、本考案のシール装置1では、D1>D2の関係にあって、第1バックアップリング部材20の第2湾曲部22の先端部22aが、第1シールリング部材10の第1湾曲部12の背面の最内径位置から、径方向内側に突出しているように構成することが必要である。
【0024】
これに対して、図1に示す従来のシール装置の場合には、第1シールリング部材100の第1湾曲部120の背面120aの最内径位置P2と、第1バックアップリング200の第2湾曲部220の先端部220aの位置Q2との関係は、第1湾曲部120の背面120aの最内径位置P2での内径をD1、第2湾曲部220の先端部220aの位置Q2での内径をD2とするとき、D2>D1の関係にある。この関係において、第1バックアップリング部材200の第2湾曲部220の先端部220aが、第1シールリング部材100の第1湾曲部120の背面120aの最内径位置P2よりも径方向外側にあり、第1湾曲部120の背面120aに、第1バックアップリング部材200の第2湾曲部220の先端角部230が接触している。このような構成では、金属製の第1バックアップリング部材200の第2湾曲部220の先端部220aの先端角部230が、エラストマ製の第1シールリング部材100の第1湾曲部120の背面120aに食い込むことになり、この食い込み部分から、第1シールリング部材100が破損しやすい。
【0025】
第1湾曲部12、120の背面12a,120aと、第1バックアップリング部材20、200の第2湾曲部22、220とが接触した状態では、第1湾曲部12、120の背面12a,120aに応力が生じることになる。シール装置1を、回転軸に取り付けて、ハウジング内に圧入装着した状態において、図1に示す従来の構成では、第1湾曲部120の背面120aに生じるミーゼス応力を測定したところ、2.4MPaであったのに対し、図3に示す本考案による構成では、1.6MPaであり、第1湾曲部12に生じるミーゼス応力は3分の2に低減されている。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本考案によれば、第1バックアップリング部材20の第2湾曲部22が、第1シールリング部材10の第1湾曲部12の背面12aの最内径位置よりも内径を減じる方向に延長した先端部22aを有することにより、第1シールリング部材10が損傷するのを有効に抑制しつつ、被密封流体圧が作用する第1シールリング部材10を、背面側から長期間にわたって安定支持することが可能なシール装置1の提供が可能になった。
【0027】
1 シール装置
10 エラストマ製の第1シールリング部材
11 第1円筒部
12 第1湾曲部
12a 背面
13 第1シールリップ部
14 第1厚肉基部
20 金属製の第1バックアップリング部材
21 第2円筒部
22 第2湾曲部
22a 先端部
23 先端角部
24 第1フランジ基部
30 第2シールリング部材
31 第2フランジ基部
32 第2シールリップ部
40 金属製の第2バックアップリング部材
41 プルリング
50 補強環
60 Oリング
70 筒状ケース
71 環状凹部
72 第3円筒部
73 カシメ部
80 ハウジング
81 軸孔
82 軸孔の内周面
90 回転軸
91 回転軸線
100 第1シールリング部材
110 第1円筒部
120 第1湾曲部
120a 背面
130 第1シールリップ部
200 第1バックアップリング部材
210 第2円筒部
220 第2湾曲部
220a 先端部
230 先端角部
900 回転軸
910 回転軸線
P1 背面12aの最内径位置
P2 背面120aの最内径位置
Q1 先端部22aの位置
Q2 先端部220aの位置
D1 第1湾曲部の背面の最内径位置での内径
D2 第2湾曲部の先端部の位置での内径
X 密封空間
Y 大気
S 領域

(57)【要約】

【課題】第1バックアップリング部材の先端部の位置の適正化を図ることによって、第1シールリング部材が損傷するのを有効に抑制し、第1シールリング部材を、背面側から長期間にわたって安定支持することが可能なシール装置を提供する。【解決手段】シール装置1が、第1円筒部11、第1シールリップ部13、および第1湾曲部12を有するエラストマ製の第1シールリング部材10と、第1シールリング部材の背面側に位置し、第1円筒部11の背面に密接して延びる第2円筒部21、および第1湾曲部12の背面に対応させて湾曲させた第2湾曲部22を有する金属製の第1バックアップリング部材20とを具え、第2湾曲部22が、第1湾曲部12の背面の最内径位置よりも内径を減じる方向に延長した先端部22aを有する。


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