(54)【考案の名称】ゴルフシミュレーション装置

(73)【実用新案権者】【実用新案権者】

(72)【考案者】【考案者】

[fig000002]
【選択図】図2

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は、ゴルフシミュレーション装置、具体的にはプレーヤによって打ち出されてグリーン上を転動するボールがグリーン上のホールに入るための初期打ち出し速度等の条件のシミュレーション装置に関する。

【従来の技術】

【0002】
近年、グリーン上の任意箇所からボールをパターによって打ち出し、該ボールをグリーン上にて転動させて、グリーン上のホールに入れるゴルフのパットを楽しむプレーヤが増加している。このプレーヤの増加に伴い、実際にグリーンに出向かなくとも、仮想のゴルフコース上でボールの転動軌跡をシミュレーションする装置が提案されている。特許文献1には、プレーヤが打ち出すボールの速度、ボールの移動方向をセンサにて求め、ボールの転動軌跡をシミュレーションする装置が開示されている。
尚、以下の記載では、転動したボールがホールに入ることをカップインと呼ぶ。
【0003】

【効果】

【0006】
1.シミュレーション装置に、ボールの打ち出し位置とホールとの距離又は相対位置のデータが入力されれば、演算部は該データに基づいてボールがカップインするのに充足すべきプレーヤの打ち出し条件を演算し、表示部に該プレーヤの打ち出し条件を表示する。これにより、プレーヤは実際のグリーン上にて、どの程度の打ち出し条件でボールを打ち出せばよいのかが精度よく正確に判る。
2.グリーン上に斜面があると、例えば斜面を横切るように打ち出されたボールは横滑りするから、想定された軌跡を描いて転動しない可能性がある。演算部は、ボール打ち出し後の時間経過に伴い該斜面がボールの転動動作に与える要因に基づいてプレーヤの打ち出し条件を演算するから、プレーヤはどの程度の打ち出し条件でボールを打ち出せばよいのかが更に精度よく正確に判る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】シミュレーション装置を示す斜視図である。
【図2】シミュレーション装置の内部ブロック図である。
【図3】ホールとボールの位置関係を示す平面図である。
【図4】(a)、(b)は、グリーンとボールとホールの側面図である。
【図5】(a)、(b)は、ボールがホール周壁上の点に衝突した状態を示す図である。
【図6】軌跡のホール中心からの距離と各軌跡ごとにカップインするボール速度との関係を示すグラフである。
【図7】(a)、(b)は、グリーンの斜面を転動する状態を示す図である。
【図8】上り斜面に対して、ボールを斜め上方方向に打ち出す状態を示す図である。
【図9】平坦なグリーン上のボールの打ち出し箇所とホールを示す平面図である。
【図10】(a)、(b)は、ボール打ち出し角度とカップイン時のボール速度とカップオーバー距離の演算結果をまとめたグラフである。
【図11】(a)、(b)は、表4及び表5におけるボール軌跡を示す図である。
【図12】ボールの打ち出し速度と打ち出し角度とカップオーバー距離の関係を纏めて示すグラフである。
【図13】(a)、(b)は、カップイン時のボールの軌跡を示す図である。
【図14】グリーンが仮想線に沿って傾斜している場合と平坦な場合を想定して、ボールの打ち出し速度と打ち出し角度とカップオーバー距離の関係を纏めて示すグラフである。
【図15】パット距離を変えた場合の、ボールの打ち出し速度と打ち出し角度とカップオーバー距離の関係を纏めて示すグラフである。
【図16】(a)は、実際のグリーンの等高線図をメッシュにて区切った図であり、 (b)は、一部のメッシュの拡大図である。
【図17】表示部に表示されたボール軌跡の例を示す図である。
【図18】図17のボール軌跡を立体的に示す図である。
【図19】表示部に表示されたボール軌跡の例を示す図である。
【図20】図19のボール軌跡を立体的に示す図である。
【図21】シミュレーション装置のボール軌跡解析手順を示すフローチャートである。
【図22】シミュレーション装置のボール軌跡解析手順を示す別のフローチャートである。

【0008】
本考案の一実施形態を図を用いて詳述する。なお、以下の記載では全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の記載では、上下方向とは鉛直方向を指すものとする。
本考案に係るシミュレーション装置は、グリーン上にてプレーヤが携帯して用いるタブレット状の携帯端末を想定しており、ゴルフのパットにてカップインするために充足すべきプレーヤの打ち出し条件等を画面に表示する。しかし、シミュレーション装置はタブレット状の携帯端末に代えて、ウエアラブルコンピュータ、例えばメガネ型ディスプレイであってもよい。
図1は、シミュレーション装置1を示す斜視図であり、図2は、シミュレーション装置1の内部ブロック図である。シミュレーション装置1は、プレーヤが携帯可能な装置本体10を備えている。該装置本体10内にボールの打ち出し位置とホールとの距離又は相対位置のデータが入力される入力部2と、ボールがカップインするのに充足すべきプレーヤの打ち出し条件を演算する演算部3と、該演算部3が演算するのに必要なプログラムが格納されたROM30と、該演算部3の演算結果に基づいて該プレーヤの打ち出し条件又はボールがホールを超えるカップオーバー距離を表示する画面である表示部5と、該演算部3に接続されてグリーンの情報を記憶したメモリ6とが備えられている。メモリ6が記憶したグリーンの情報にはグリーンのホールの位置、グリーンの微小領域ごとの傾斜度等が含まれる。即ち、メモリ6内にはグリーンの設計情報が含まれる。
演算部3は通常は1つのCPUで構成されるが、複数のCPUの組み合わせであってもよい。また、演算部3はCPUとASIC(Application Specific Integrated Circuit)とを組み合わせて用いてもよい。
【0009】
入力部2は例えばGPS(Global Positioning System、地表面傾斜測定)機能を備え、プレーヤがグリーン70上にて入力部2の操作釦(図示せず)を押すと、プレーヤの位置がGPSによって読み出される。即ち、グリーン上にてボールの打ち出し箇所にて操作釦を押せば、ボールの打ち出し箇所の位置が読み込まれる。演算部3がメモリ6内のグリーンの情報と、入力部2から入力されたボールの打ち出し箇所の位置とを読み込めば、ホールとボールの打ち出し箇所の相対位置又は距離が判る。尚、ホールとボールの打ち出し箇所の距離として、プレーヤが実際に歩測した距離を入力部2から入力してもよい。以下の記載では、ホールとボールの打ち出し箇所間の距離を「パット距離」と呼ぶ。
【0010】
考案者はボールがカップインするのに充足すべきプレーヤの打ち出し条件を演算するのに種々の数学モデルを用いた。ボールは直径42.67mm、ホールは直径108mmと規格が定められており、演算ではこの数値を用いた。以下に、該数学モデルの概略を説明する。この数学モデルは、カップイン時のボール速度解析、グリーンの傾斜度とボールの打ち出し速度との関係解析、及び実際のグリーンにおけるボール軌跡解析に大別される。
【0011】
(数学モデルの概略)
カップイン時のボール速度解析
図3は、ホール7とボール4の位置関係を示す平面図である。ボール4がホール7の直径上を左から右に転動する際のボール4の軌跡を(1)、ボール4がホール7に達した際に、ボール4の中心がホール7の縁に一致する場合のボール4の軌跡を(6)で示す。(2)〜(5)は、(1)と(6)の間に位置する軌跡を示す。軌跡(1)はボール4がホール7の直径上を転動する軌跡であるから、ホール7中心から軌跡(1)までの距離は0である。これに対し、軌跡(6)はホール7の縁を通るから、ホール7中心から軌跡(1)までの距離はホール7の半径である54mmである。軌跡(2)〜(5)については、ホール7中心から軌跡までの距離は、夫々10、20、30、32.5mmと設定した。
【0012】
図4(a)、(b)は、グリーン70とボール4とホール7の側面図である。ボール4がホール7の縁に達した際のボール速度をVo、ボール4がホール7内を飛行する時間をt、t秒間にボール4が水平移動する距離をS、t秒間にボール4が落下する高さをHとすると、
【0013】
【数1】
[fig000003]
で示される。即ち、ボール4がホール7上を空中移動する場合には、ボール4の中心である点Oが下向きの放物線状の軌跡Xを描く。また、距離Sは図3にて(1)の場合が最も長く、(6)に向けて順に短くなっていく。従って、ボール速度Voが同じであれば、(1)の場合が最も時間tが長い。また、軌跡(6)はボール4がホール7内を飛行する距離Sが0であるから、カップインするにはボール4がホール7の縁に接した際の速度Voは0でなければならない。即ち、軌跡(6)にあっては、ボール4がホール7の縁にて停止し、自重で転がってホール7内に入る。この軌跡(6)を描くように、ボール4を打ち出すことを「ジャストタッチ」と呼ぶ。
【0014】
ここで、図4(b)に示すように、ボール4がホール7内を飛行してホール7の周壁上の点である点Pに衝突した際に、軌跡Xが点Pよりも下側を通ると接線方向の力fの分力mが点Oに加わる。分力mは下向きであるから、ボール4には点Pを中心に反時計方向に下向きの回転モーメントが生じ、カップインする。
この逆に軌跡Xが点Pよりも上側を通ると、図5(a)に示すように、接線方向の力fの分力mは上向きであるから、ボール4には点Pを中心に時計方向に上向きの回転モーメントが生じる。この結果、カップインしない。
【0015】
また、カップインするか否かは、ボール4が受ける回転による要因も考慮すべきである。図5(b)に示すように、ボール4は点Oを中心に時計方向に回転しており、回転しているボール4が点P又はホール7の周壁に衝突すると、ボール4の回転速度が急激に遅くなる。回転速度が遅くなったボール4の慣性エネルギーは、点Oに上向きの力qとして作用し、ボール4には上向きの回転モーメントが生じる。ボール4の軌跡Xが点Pよりも下側を通る場合は、ボール4の回転による上向きの力qと接線方向の下向きの力fの大小関係によって、カップインするか否かが決まる。
【0016】
(カップイン時のボール速度とホール中心からの距離関係の演算)
以上の前提を踏まえて、カップイン時のボール速度解析、具体的にはカップイン時のボール速度とホール中心からの距離の関係を演算する。
先ず、計算条件として、ボール4がホール7の縁に達した際を時間t=0に設定し、このときのボール速度Voを任意に設定する。ボール4がホール7の縁を離れてから微小時間単位でボール4の水平移動距離S、落下高さHを、ボール4がホール7の反対側の縁又は周壁に接するまで演算し続ける。ここで、微小時間は約1/1000秒であるが、該微小時間はこの値に限定されない。
ボール4がホール7の縁又は周壁に接すれば、ボール4中心の軌跡Xと、点Pの高さ位置を求め、軌跡Xが点Pよりも下側を通る場合は、前記の上向きの力qと接線方向の下向きの力fの大小関係によって、カップインするか否かを判定する。考案者が軌跡ごとにカップインする上限のボール速度Voを求め、かかる速度Voに対応する時間t、水平距離S、高さHの演算結果を表1に示す。表1にて、時間tは点Oがホール7の縁を離れてからボール4がホール7の反対側の縁又は周壁に接するまでの時間、即ちボール4の飛行時間である。また、水平距離Sは時間t内でボール4が飛行する距離であり、軌跡毎によって異なる。
【0017】
【表1】[fig000004]

尚、考案者は上記の計算にあたっては、ホール7の周囲の傾斜の影響をも考慮したが、ここでは記載を省く。
【0018】
考案者は表1のデータから、図6に示すように、軌跡のホール中心からの距離と各軌跡ごとにカップインするボール速度Voとの関係を示すグラフを求めた。図6にて、円で囲んだ1乃至6を結ぶ曲線の下側である塗り潰された箇所が、カップイン可能な範囲である。円で囲んだ1〜6は、軌跡(1)〜(6)に相当する。
考案者は実際のグリーン上にて、ホール7近傍に速度計を設置して、パット距離1mでボールをパターにて打ち出した。この結果、ボール速度Voが1.2〜1.4m/secとなるようにボール4を打ち出せば、80%〜100%の確率でカップインできることを確認している。
【0019】
図6のグラフから、ボール4が軌跡(1)乃至(3)を辿るように打てば速度Voが速くても、カップインする確率が高いことが判る。しかし、プレーヤが実際に軌跡(1)乃至(3)に対応してホール7中心から必ず20mmの範囲内にボール4を打ち出すことは困難である。これに対し、軌跡(4)と(5)に対応してホール7中心から30mmの範囲内にボール4を打ち出せば、速度Voが約0.9m/secと強めの打ち出しでもカップインできることが判る。
【0020】
グリーンの傾斜度とボールの打ち出し速度との関係解析
上記の演算結果により、カップインするのに満たすべき、ボール4がホール7の縁に達した際の速度Voを求めることができた。しかし、実際のグリーンは平坦ではなく、傾斜がある。従って、ボール4の打ち出し箇所からホール7に達するまでに、ボール4の速度及び位置は傾斜面の影響を受ける。そこで、考案者は次にグリーンの傾斜度とボールの打ち出し速度との関係を演算によって求め解析した。
【0021】
図7(a)、(b)は、斜面におけるボール4を示す図であって、(a)はボール打ち出し方向に対して上り斜面を、(b)はボール打ち出し方向に対して下り斜面を夫々示す。ここで、上り傾斜は、ボール4の打ち出し箇所よりもホール7の方が高い傾斜、下り傾斜は、ボール4の打ち出し箇所よりもホール7の方が低い傾斜を指す。斜面の傾斜角をαとすると、ボール4の自重にsinαを乗じた力F2が上り斜面の場合はボール4の減速側に作用し、下り斜面の場合は力F2がボール4の加速側に作用する。また、ボール4はグリーン70上を転動するから、転がり摩擦力F1及び空気抵抗による力F3を受ける。従って、ボール4はグリーン70上を転動する際に、
【0022】
【数2】
[fig000005]
で示される抵抗力Fを受ける。従って、ボール4の打ち出しからt秒後のボール4の速度Vbは、ボール4の打ち出し速度(初速度)をVboとすると、
【0023】
【数3】
[fig000006]
で示される。ここで、Mはボール4の質量、ΔMは慣性によるボール質量の増分を指す。実際の計算では、抵抗力F及びΔMの値が刻々と変化するので、微小時間間隔で演算を行う。ここで微小時間とは、約0.01秒であるが、該微小時間はこの値に限定されない。また、考案者は空気抵抗による力F3は、転がり摩擦力F1や力F2に比べて小さな値であり、風速が数m/secを超える場合に計算に加えるべき力であることを見出している。
更に、ボール4はグリーン上を転動する際に、抵抗力Fを受けるから、速度Vbが0となったとき、具体的にはカップインしなかった場合はボール4がホール7を通り過ぎて所定距離を進んだ後に停止する。これをカップオーバー距離と呼び、考案者は抵抗力Fに基づいて、このカップオーバー距離を求めている。
【0024】
また、ボール4の打ち出し箇所とホール7中心を結ぶ線を仮想線L1とすると、また、斜面は仮想線L1上にのみ傾斜しているだけでなく、該仮想線L1に直交する面内にあっても傾斜している場合が多い。この仮想線L1に直交する面内における傾斜を横傾斜と呼ぶ。かかる横傾斜がある場合に、仮想線L1に沿ってボール4を打ち出すと、ボール4は速度だけでなく、グリーン上の位置が横斜面の影響を受ける。図8は横傾斜を有する上り斜面に対して、ボール4を上り方向に打ち出す状態を示す図である。横傾斜は下り傾斜であるとする。ボール4を打ち出してから、時間の経過とともに、ボール4は横傾斜に沿って下向きにも転動する。ボール4の打ち出し箇所を原点として、水平方向をX軸、高さ方向をZ軸、奥行き方向をY軸とする。打ち出されるボール4のベクトルがX軸となす角度をθ、打ち出しから単位時間後のボール4の位置をPn、ボール4の初期打ち出し速度をVbx、位置Pnにおける横傾斜の斜面の傾斜角をβ、Vbxの垂直方向成分をVby、位置Pnから微小時間後のボール4の位置をPn+1、位置Pn+1におけるボール速度の垂直方向成分がVbyとなす角度をφとする。
ボール4の位置PnのX、Y、Z軸上の座標は以下の如く表される。
【0025】
【数4】
[fig000007]
ここでγ及びφは
【0026】
【数5】
[fig000008]
で表される。
このX、Y、Z座標を元に、微小時間後のボール4の位置Pn+1のX、Y、Z軸上の座標は以下の如く表される。
【0027】
【数6】
[fig000009]
斜面を転動するボール4の位置演算にあっては、上記の数4と数5の式を用いて微小時間間隔毎に座標と各角度を演算する。
【0028】
考案者はボール4の打ち出し箇所からホール7までの距離、即ち前記のパット距離を1.5m、グリーン上を無風状態、ボール4の打ち出し速度を前記の「ジャストタッチ」に設定して、カップインするのに必要なボール4の打ち出し角度(単位:°)、ボール4の打ち出し速度(単位:m/sec)とグリーンの傾斜の関係を求めた。
ここで、ボール4の打ち出し角度とは前記の仮想線L1に対する角度を指し、仮想線L1よりも左側を負、右側を正で表示する。また、グリーンの傾斜度は3%とし、グリーンは仮想線L1に沿ってのみ傾斜しているとする。即ち、横傾斜はない。このときのグリーン70上のボール4の打ち出し箇所とホール7は、図9に示される。演算結果を表2に示す。
【0029】
また、ボール4の打ち出し速度を「ジャストタッチ」よりも強めに設定して、カップオーバー(単位:m)が生じるように設定して、カップインするのに必要なボール4の打ち出し角度、ボール4の打ち出し速度とグリーンの傾斜の関係を求めた。この結果を表3に示す。
【0030】
【表2】[fig000010]


【0031】
【表3】[fig000011]

上記の表2及び表3の演算結果から、上り傾斜の場合は傾斜が無い場合に比して、ボール4の打ち出し角度の許容幅が小さくなり、下り傾斜の場合はボール4の打ち出し角度の許容幅が大きくなることが判る。また、「ジャストタッチ」の方が、強めにボール4を打ち出すよりもボール4の打ち出し角度の許容幅が大きくなることが判る。尚、考案者はグリーンの傾斜度を5%、7%に設定して、同様の演算を行い、上り傾斜の場合はボール4の打ち出し角度の許容幅が小さく、下り傾斜の場合は該許容幅が大きくなることを確認している。
【0032】
図10(a)、(b)は、上記の演算結果をまとめたグラフであり、図10(a)の線A1は傾斜の無いグリーンを、線B1は上り傾斜のグリーンにおける演算結果を夫々示す。また、図10(b)は下り傾斜のグリーンにおける演算結果を示す。図10(a)の結果から、パット距離が1.5mの場合では、傾斜の無いグリーンまたは上り傾斜のグリーンにあっては、カップオーバー距離が1m前後、換言すればボール速度で1m/sec前後がボール4の打ち出し速度の上限と考えられる。また、ボール速度で0.2〜0.3m/sec前後がボール4の打ち出し速度の下限と考えられる。
更に、図10(b)の結果から、パット距離が1.5mの場合では、下り傾斜のグリーンにあっては、ボール速度で0.7〜0.8m/sec前後がボール4の打ち出し速度の上限と考えられる。
【0033】
次に、考案者は表2における条件に加えて、グリーンの横傾斜を3%の上り傾斜に設定し、ボール4の打ち出し速度を前記の「ジャストタッチ」に設定して、カップインするのに必要なボール4の打ち出し角度(単位:°)、ボール4の打ち出し速度(単位:m/sec)とグリーンの傾斜の関係を求めた。演算結果を表4に示す。
更に、考案者は表3における条件に加えて、グリーンの横傾斜を3%の上り傾斜に設定し、ボール4の打ち出し速度を「ジャストタッチ」よりも強めに設定して、カップオーバー(単位:m)が生じるように設定して、カップインするのに必要なボール4の打ち出し角度、ボール4の打ち出し速度とグリーンの傾斜の関係を求めた。演算結果を表5に示す。
【0034】
【表4】[fig000012]

ボール軌跡は、打ち出された側に膨らみを向けるように曲がった形状となる(図11(a)、(b)参照)。表4の演算結果から、ボール打出し速度が遅いほど、グリーンの傾斜の影響を受けやすいから、ボール打出し角度を大きくする必要があることが判る。
【0035】
【表5】[fig000013]

表5に示すデータにあっては、「ジャストタッチ」の場合よりもボール速度が速いので、グリーンの傾斜の影響は少ないことが判る。また、グリーンが下り傾斜の場合にボール4を強く打ち出すと、カップインしなかった場合はカップオーバー距離が2m近くになるから現実にカップインするには用いることができないことが判る。
【0036】
図11(a)、(b)は、表4及び表5におけるボール軌跡を示し、(a)は下り傾斜のグリーンの場合を、(b)は上り傾斜のグリーンの場合を夫々示す。何れの場合もカップイン時のボール軌跡は数多く存在するが、下り傾斜の場合はボール軌跡の膨らみ具合に差が大きく、ボール4の打ち出し速度と打ち出し角度の組み合わせが大事であることが判る。一方、上り傾斜のグリーンの場合は「ジャストタッチ」の場合を除き、打ち出し角度が小さく、各ボール軌跡間の差が小さい。ゴルフ業界にてよく言われる「上りはホールを外さずに強めに」との教訓は、この演算結果によって実証された。
尚、実際のグリーン上では、風の影響があり、考案者はボール進行方向に逆らう向きの風の方が、ボール進行方向に沿う風よりも影響があることを見出しているが、詳細な記載は割愛する。
【0037】
上記の如く、グリーンに横傾斜がある場合は、カップインの為には、ボール4の打ち出し速度と打ち出し角度を適切な値に合わせる必要がある。図12は、ボール4の打ち出し速度と打ち出し角度とカップオーバー距離の関係を纏めて示すグラフである。パット距離上には傾斜はなく、横傾斜は3%の上り傾斜に設定した。また、パット距離は2mに設定した。
図12にて、領域Aはボール4の打ち出し速度が約1.4m/sec、打ち出し角度が約14°であってジャストタッチでカップインすることが出来る領域である。また、領域Bはボール4の打ち出し速度が約1.95m/sec、打ち出し角度が約4°であって、ほぼ上限のボール4の打ち出し速度にてカップインすることが出来る領域である。線C1はカップオーバー距離とボール4の打ち出し速度とも関係を示す。線D1にて囲まれる領域が、カップインする可能性が高い領域である。領域Aに示すように、打ち出し角度が14°ではカップインするには、ボール4の打ち出し速度は1.39〜1.42m/secの範囲の値であることが必要となる。但し、同じ打ち出し角度であってもボール4がホール7に近づくにつれボール4の曲がり具合に差が生じる。図13(a)は、カップイン時のボール4の軌跡を示す。両軌跡とも最後の1回転でカップインしている。
同じジャストタッチの場合、ボール4の打ち出し速度を1.406m/secとすると、打ち出し角度が11°から14.7°の間にあればカップインする。図13(b)は打ち出し角度が11°と14.7°の場合のカップイン時のボール4の軌跡を示す。
【0038】
図12の領域Bに示すように、カップインするためのほぼ上限のボール4の打ち出し速度にあっては、ボール4の打ち出し速度は1.94m/secで打ち出し角度が3.8°であることが必要となる。仮にカップインに失敗するとカップオーバー距離は2.1mとなる。
線D1にて囲まれる領域を参照すると、カップインさせるためには、ボール4の打ち出し速度を1.4m/sec程度と弱めに設定することが可能であれば、区間D2で示すようにボール4の打ち出し角度の許容幅が大きくなることがわかる。一方、ボール4の打ち出し角度を7°程度と正確に設定することが出来れば、区間D3で示すように、ボール4の打ち出し角度の許容幅が大きくなることもわかる。
【0039】
考案者はまた、パット距離及び横傾斜はそのままで、グリーンが仮想線L1に沿って傾斜している場合と平坦な場合を想定して、ボール4の打ち出し速度と打ち出し角度とカップオーバー距離の関係を演算した。図14はこの結果を纏めて示すグラフである。グリーンが仮想線L1に沿って下り斜面となっている場合は、カップオーバー距離を0.5mとすると、カップインするのに必要なボール4の打ち出し角度は14.0〜17.3°の範囲となる。しかし、ボール4の打ち出し速度の許容範囲は1.13〜1.18m/secであり許容幅が狭い。
これに対し、グリーンが仮想線L1に沿って上り斜面となっている場合は、カップオーバー距離を同じ0.5mとしたときに、カップインするのに必要なボール4の打ち出し角度は4.5〜6.0°の範囲となり、下り斜面の場合に比して狭い。しかし、ボール4の打ち出し速度の許容範囲は1.80〜1.97m/secであり許容幅が下り斜面の場合に比して広くなる。
【0040】
上記内容からグリーンが仮想線L1に沿って傾斜し、且つ上向きに横傾斜している場合は、グリーンが下り傾斜のときは、ジャストタッチでカップインしようとするのが最もボール4の打ち出し角度の許容幅が大きいことがわかる。考案者はこの打ち方を最も推奨している。グリーンが下り傾斜のときは、ボール4の打ち出し速度の許容幅が狭いから、ボール4を強目の速度で打ち出すことはカップインできなかった場合、次のパット距離が大きくなるので推奨していない。
逆に、グリーンが上り傾斜のときは、カップインするためには、ボール4を強めの速度で打ち出すことを推奨している。ボール4の打ち出し速度の許容幅が広く,カップオーバー距離も短いからである。
【0041】
考案者はまた、パット距離を変えて、ボール4の打ち出し速度と打ち出し角度とカップオーバー距離の関係を演算した。図15はこの結果を纏めて示すグラフであり、パット距離は夫々1m、2m、4m、8mに設定した。グリーンは仮想線L1に沿って平坦である。カップオーバー距離を0.5mとしたときに、カップインするためのボール4の打ち出し角度、打ち出し速度はともに、パット距離が長いほど許容幅が小さくなることが判る。例えば、パット距離が1mではボール4の打ち出し角度は、3.8°の許容幅があるのに対して、パット距離が8mではボール4の打ち出し角度は0.4°の許容幅しかない。
【0042】
実際のグリーンにおけるボール軌跡解析
上記の数学モデルから、ゴルフのパットにおけるボール軌跡解析がほぼできたので、かかる数学モデルに基づいてプログラムを作成したシミュレーション装置1を用いたボール軌跡解析について説明する。ボール軌跡解析手順は、図21のフローチャートに示される。
まず、シミュレーション装置1の使用準備として、グリーンの標高データ、即ち等高線図からグリーン上に座標を設定してグリーン上の傾斜データを作成する。図16(a)は、実際のグリーンの等高線図を一辺が2mの長さであるメッシュ71にて区切った図であり、図16(b)は、一部のメッシュ71の拡大図である。図16(b)にて各メッシュ71に識別符号が付され、該識別符号に応じて各メッシュの標高値が入力される。尚、メッシュの一辺長さは2mに限定されない。等高線図にはホール7の位置が格納されている。等高線図のデータはメモリ6(図2参照)に格納されている。尚、等高線図のデータはグリーンの設計値に基づいても、上空からカメラで俯瞰して撮影した3次元データを手入力してもよい。
演算部3はメモリ6の内のメッシュの標高データに基づいて隣り合うメッシュとの間の傾斜度を求め、グリーン全体の傾斜データを作成する(ステップS1)。
【0043】
次にプレーヤはホール7の位置を入力部2から入力する。この入力は、実際にグリーン上に居るプレーヤがホール7にて入力部2のGPSを操作して入力しても、表示部5上のホール7に該当する箇所をプロットしても、入力部2からホール7の座標を手入力してもよい。次にプレーヤはボール4の打ち出し箇所の位置を入力する(ステップS2)。ホール7の位置とボール4の位置の入力手順は、何れを先に行ってもよい。
演算部3は入力されたホール7の位置とボール4の打ち出し箇所の位置とからパット距離を求めるとともに仮想線L1を設定する。該仮想線L1上の傾斜度及び横傾斜を求めて、これをメモリ6に格納する。
【0044】
次に、プレーヤはボール4の打ち出し速度とボール4の打ち出し角度を入力部2から手入力する(ステップS3)。演算部3は先に求めたグリーンの傾斜度とボール4の打ち出し速度とボール4の打ち出し角度から、カップインする際のボール軌跡、カップイン時のボール4の速度、カップオーバー距離を求める。求めたボール軌跡、カップイン時のボール4の速度、カップオーバー距離を表示部5に自動的に表示する(ステップS4)。次に、演算部3は入力されたボール4の打ち出し速度とボール4の打ち出し角度で、カップインできるか否かのカップイン判定を行う(ステップS5)。例えば、入力されたボール4の打ち出し速度とボール4の打ち出し角度では、カップインできないときは、表示部5には例えばエラーの表示を表示させるとともに、ステップS3に戻り、再度の入力を促す。
ボール4の打ち出し位置をホール7の回りの6か所に設定し、各箇所についてボール4の打ち出し速度とボール4の打ち出し角度を入力した。表示部5に表示されたボール軌跡の例を図17に示す。パット距離は何れの打ち出し位置からも約3mであった。このときに演算されたカップイン時のボール4の速度、カップオーバー距離を表6に示す。
【0045】
【表6】[fig000014]


【0046】
表6の演算データも表示部5に表示され得る。図17にて、ボール位置3、4、5はホール7よりも高く、ボール位置1、2、6はホール7よりも低い。ボール位置3、5はホール7の側方に位置する。ボール位置4及び5では入力されたボール打ち出し速度が小さく下り傾斜であるので、カップインさせるためにはボール打出し角度は大きくなる。ボール位置1及び2では、カップインする際の速度が速いからボール打出し速度が速いことが判る。ボール位置3、5ではホール7の側方から打ち出すから、ボール打出し角度は大きくなる。かかる表示されたデータを見て、プレーヤはボール打出し速度を遅くすべきことや、ボール打出し角度を小さく変更すべきことがわかる。
【0047】
プレーヤは表6のデータを見て、ボール位置に対応するボール打出し角度及びボール打ち出し角度にてボール4を打ち出す。前記の如く、ある程度の上達したプレーヤになるとボール4をパターによって打ち出す速度や打ち出す角度は経験に基づいて調節することが可能であるから、これによりカップインする確立を高めることが出来る。
図18は、図17に示す各打ち出し位置からのボール4の予想される軌跡を立体的に示した図である。図17及び図18に示すボール4の軌跡が表示部5に示されることにより、プレーヤは次に打ち出すボール4の軌跡を事前に知ることができる。
【0048】
また、考案者はホール7から下り傾斜した位置に3箇所のボール打ち出し位置を設定し、ボール4の軌跡を求めた。各打ち出し位置からのパット距離は何れも約9mであった。このときの表示部5に表示されたボール軌跡の例を図19に平面的に示し、図20に立体的に示す。また、このときに演算されたカップイン時のボール4の速度、カップオーバー距離を表7に示す。ボール位置1、2では下り傾斜の影響により、カップオーバー距離を小さくすべくボール打ち出し角度が大きくなっていることが判る。
【0049】
【表7】[fig000015]


【0050】
本考案に係るシミュレーション装置1を用いて、ボール打ち出し位置とともに、カップオーバー距離等を入力して、ボール軌跡(図17、図19参照)を求めることもできる。図22はこの手順を示すフローチャートである。
演算部3は前記の如く、メモリ6の内のメッシュの標高データに基づいて、グリーン全体の傾斜データを作成し(ステップS1)、プレーヤはボール4の打ち出し箇所の位置を入力する(ステップS2)。
次に、プレーヤはカップオーバー距離を入力する。或いはこれに代えて、表示部5にボール打出し速度の強、標準、弱のボタンを表示させて、プレーヤが何れかのボタンを選択して入力してもよい(ステップS6)。この場合、例えばボール打出し速度の強は長いカップオーバー距離に相当し、ボール打出し速度の弱は短いカップオーバー距離に相当する。
ボール打ち出し位置とカップオーバー距離又はボール打出し速度の程度が入力されることにより、カップイン可能な打ち出し角度は自動的に決定される。演算部3は入力されたボール打ち出し位置とカップオーバー距離等に基づいて、カップインするボール打ち出し速度、ボール打ち出し角度を自動的に求める(ステップS7)。その後、カップインする際のボール打ち出し速度、ボール打ち出し角度、ボール軌跡、カップオーバー距離を表示部5に自動的に表示する(ステップS8)。プレーヤは表示されたボール打ち出し速度、ボール打ち出し角度、ボール軌跡を見て、パット動作を行う。
【0051】
尚、考案者はゴルフのパットにおけるパターロフトの影響についても検討した。このパターロフトとはパターにてボール4を打ち出す際に、ボール4がパターに当たってから0.0数秒間グリーンから浮き上がることを指す。考案者の検討ではパターロフトによってボールが空中に浮いている分だけボールの転がり抵抗が少なくなり、その分カップオーバー距離も延びることになる。しかし、この延びる距離は例えばパット距離4.5mの場合で、4cm程であってほとんど影響がないことを見出している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本考案は、プレーヤによって打ち出されてグリーン上を転動するボールがグリーン上のホールに入るための初期打ち出し速度等の条件をシミュレーションする装置に用いると最適である。
【0053】
1 シミュレーション装置
2 入力部
3 演算部
4 ボール
5 表示部
6 メモリ
7 ホール
10 装置本体
30 ROM
70 グリーン
71 メッシュ


(57)【要約】

【課題】ボールを打ち出す箇所からホールまでの距離を考慮して、ボールを打ち出す速度や打ち出す角度を求めることが出来る装置を提案する。【解決手段】シミュレーション装置1は、グリーン上にてボールの打ち出し位置とカップインすべきホールとの距離又は相対位置のデータが入力される入力部2と、該入力部2へ入力される距離又は相対位置のデータに基づいて、ボールがカップインするのに充足すべきプレーヤの打ち出し条件を演算する演算部3と、該演算部3の演算結果に基づいて該プレーヤの打ち出し条件又はボールがホールを超えるカップオーバー距離を表示する表示部5を備えている。


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