(54)【考案の名称】太陽光発電装置

(51)【国際特許分類】

H01L 31/042

(73)【実用新案権者】学校法人 東洋大学

(72)【考案者】【考案者】

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【選択図】図1

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は太陽電池パネルまたはこれを用いた太陽光発電装置に利用される冷却装置に関するものである。

【従来の技術】

【0002】
太陽電池を用いた発電装置は、シリコンなどの半導体の障壁電位部に光が照射されると有機したキャリアが分離されて電気エネルギーに変換し、発電を行うものである。シリコン系半導体太陽電池のほか化合物半導体系のものや色素増感、有機薄膜などの有機系太陽電池など種々の太陽電池が開発されているが、現状としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン薄膜などのシリコン系半導体によるものが市場の多くを占めている。
【0003】
なお、本考案でいう太陽電池パネルとは太陽電池のセル、それを結合したモジュールまたはその集合体であるアレイなど太陽光発電装置を形成する光電変換素子の集合体を意味する。
【0004】
太陽電池は、光エネルギーを利用するため、石油エネルギーや原子エネルギーの供給が不要で排出物もないので、地球環境の維持に適したクリーンエネルギー源として注目されている。また、他の発電設備に比べて騒音や振動などがなく保守も容易という利点があり、家庭におけるエネルギー源として世界的に普及しており、家庭から電力会社への余剰エネルギーの売買も行われている。
【0005】
しかし、太陽光発電装置においては、光照射により温度上昇に伴い障壁電位が低下して発電電圧が低下する。各種半導体においては一般に温度上昇に伴う発電電流も若干増加するが、電流の増加比に対して発電電圧の低下が圧倒的に大きいので、発電電力と発電効率が低下するという問題があった。
【0006】
これは多結晶シリコン半導体による太陽電池の場合、モジュールの温度が1℃温度上昇すると最大出力が約0.66%比例的に低下するというデータ(「太陽エネルギー工学」浜川、桑野(培風館1994年)も報告されている。つまり、太陽電池装置を屋根などに設置した場合、真夏のモジュールの温度は60℃以上になり、太陽電池の標準温度25℃との温度差が36℃以上となり最大出力は標準温度状態から36℃x0.66%=23.8%以上も低下することとなる。
【0007】
この問題は最も市場規模が多いシリコン系半導体において顕著であり、太陽電池装置の実際の利用、運用においては深刻な問題となっている。そのため従来、太陽電池モジュールや装置内に冷却媒体を利用する提案(特許文献1、特開2003−113771号)や、ペルチェ冷却素子による冷却法など種々の提案がなされている。しかし、冷却手段をモジュール装置内に組み込むことは太陽電池装置の機能を十分発揮させるものでなく、構造が複雑となりコストアップとなってしまう。
【0008】
また、屋上の給水タンクなどの壁面に太陽電池モジュールを取り付けてタンク内の水との間の熱交換により冷却する装置(特許文献2、特開平7−137788号)なども提案されているが、冷却水の温度上昇に伴いモジュールの冷却温度を十分に下げられないと共に、温度差に比例した伝達熱による冷却なので放出熱量に限界があり冷却速度も高くできないなどの問題点が生じている。
【0009】
また、特許文献3、特開2005−39025号においては、太陽電池モジュールの上面に親水性光触媒を担持させた光ガラス上に水供給手段から水を供給し、水の気化熱により温度上昇を抑制する装置が示されている。この提案によれば通常の太陽電池モジュールの表面に散水しただけでは効果に乏しく、親水性光触媒ガラスを太陽電池モジュール表面に配置しその表面に散水することで冷却効果を得ている。このため親水性光触媒で加工した表面ガラスを配する必要があり、製造加工が複雑でコスト高となる。さらに、太陽光を受光する表面部にガラスを配して散水することは受光効率を妨げ変換効率の低下を招く可能性があるため理想的ではない。
【0010】
太陽電池モジュールによる発電装置の冷却装置では、装置構造や設置においても出来るだけ簡便で、コスト高にならず、簡単に設営可能で、かつ変換効率に影響しない効率的な冷却装置が求められている。
【0011】

【効果】

【0020】
請求項1記載の考案によれば、太陽電池パネルを有する太陽光発電装置において、前記太陽電池パネルの太陽光非照射面に配置された吸水機能性材と、前記吸水機能性材の下部に設けられた貯水部とから成り、前記貯水部の水を前記吸水機能性材を介して浸透させることにより前記太陽電池パネルの冷却を行うことを特徴とする装置であるため、太陽電池モジュール装置内に冷却装置を埋め込む必要がなく、強制冷却を行わず、簡易な構成でコストのかからない冷却装置を提供することができる。さらに、貯水部の水が吸水性機能性材を介して浸透させられることにより気化熱を利用して効率良く冷却することが可能となる。
【0021】
また、請求項2記載の考案によれば、請求項1に記載する装置において、前記吸水機能性材は不織布または紙または合成繊維材による浸透材からなる素材であることを特徴とする装置であるため、汎用性のある不織布、紙、ポリエステル繊維などの合成繊維材、キムタオル、吸水布などが利用できコストの安い冷却装置を提供することができる。
【0022】
また、請求項3記載の考案によれば、請求項1に記載する装置において、前記貯水部は雨水を収集し貯水できるように構成されていることを特徴とする装置であるため、ポンプにより水を汲み上げたり、水道水を供給しなくても冷却することが可能であり、独立して使用することも可能となる冷却装置を提供することができる。
【0023】
また、請求項4記載の考案によれば、請求項1に記載する装置において、前記貯水部は前記太陽電池パネルを前記吸水機能性材により挟持し、貯水された水分の蒸発を抑制するよう密封されていることを特徴とする装置であるため、貯水部の水の蒸発が抑制され、蓄えられた水が効果的に吸水機能性材に供給できる構成となっている。
【0024】
また、請求項5記載の考案によれば、請求項1に記載する装置において、前記太陽光パネルの太陽光非照射面側には吸水機能性材を挟んで通気板が配置されており、前記通気板は前記太陽電池パネルの中央上部へ空気の流れを導くように配置されていることを特徴とする装置であるため、太陽光非照射面(パネル背面)での空気の流れを太陽電池中央上部へ導きより効果的な冷却効果を得ることができる。
【0025】
また、請求項6記載の考案によれば、太陽電池パネルを有する太陽光発電装置において、前記太陽電池パネルの太陽光非照射面に配置された吸水機能性材と、前記吸水機能性材の下部に設けられた貯水部とから成り、前記貯水部には温水が供給され、前記貯水部に供給された温水または塩化カルシウム水を前記吸水機能性材を介して浸透させることにより前記太陽電池パネルを加熱することを特徴とする装置であるため、周囲温度が極端に低下したような場合において、温水を供給すれば、熱伝導媒体などの氷結を解凍したり、溶雪のために利用したりすることが可能となる。
【0026】
従って、本考案の太陽電池発電装置では、極めて簡便な構成により利便性の高い効果的冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本考案による太陽光発電装置を示す説明図である。
【図2】本考案による図1の装置を正面から見た説明図である。
【図3】本考案による装置の貯水部を説明する図である。
【図4】本考案による太陽電池パネルの太陽光非照射面(裏側)の説明図である。
【図5】本考案による太陽光発電装置を屋上に取り付けた図である。

【0028】
本考案は、太陽光エネルギーを利用し電気エネルギーに変換するため、主に野外で使用されることを目的として、出来るだけ少ない部品点数で簡便で、効率的な冷却装置を備えた太陽電池発電装置を提供するものであり、以下に本考案の実施例を図面に基づき説明する。
【0029】
図1は、本考案による太陽光発電装置を示す説明図である。図は説明の都合上模式的に記載されている。図1においては太陽電池パネル11を支持体12上に設置した状態の太陽光発電装置10を横から横断的に見た構造である。
【0030】
太陽電池パネル11のパネル表面は太陽光の照射方向に向かって設置され、支持体12上の上部止め部13および下部止め部14により支持体12に固定されている。太陽電池パネル11の裏面(太陽光非照射面)には吸水性伝熱媒体15が配置されている。
【0031】
この伝熱媒体15は、ほぼ太陽電池パネル11の裏面全体に亘って配置されている。パネル11と伝熱媒体15との接合は接着剤または鋲などなどの留め具でも可能であるが、太陽光発電装置内のモジュール又はセルの裏部全体をカバーし、密着するようになっていることが望ましい。
【0032】
太陽電池パネル11の下方には貯水部16が設けられており、伝熱媒体15の下方端が貯水部16の内部へ伸びている。伝熱媒体15は、吸水機能性材から成っており、貯水部16内の水を吸水し、上部へ吸い上げる機能を有している。
【0033】
伝熱媒体15としては、吸水機能を有しているものであれば素材を問うものでないが、本考案者の検討によればこの浸透材として不織布、キムタオル、クッキングペーパー、吸水ダスター、紙などの市販の製品であっても良好な吸水性および浸透放熱効果が得られている。また、耐久性などを考慮すると吸水性ポリマー材などから成る合成繊維による浸透材でも良い。
【0034】
また、放熱効果を上げるために太陽電池パネル11の裏面は通気性が良くなるように設置するのが望ましい。本考案の実施例において支持体12は軽量で強度を保つアルミ材などで井桁状に構成し、背面を開放端としている。屋上に設置する際は通気性を配慮し気化冷却を促進するように設置する。
【0035】
貯水部16には冷却用の水が注入され、伝熱媒体15により下方から上方へ水が吸い上げられて気化熱により太陽電池パネルのモジュールやセルが冷却される。本考案による冷却効果としてパネルの上下左右においてばらつきがあるものの本考案による冷却を行わない場合に比較して8℃から10℃の冷却効果を得ており、モジュールの発電効率も向上している。
【0036】
この貯水部16は支持体12と一体に形成されており、屋上などに設置した場合、太陽電池パネル11上の雨水を収集し貯水することもできる構成となっている。さらに、貯水部16の上部は伝熱媒体15が侵入する部分以外は蓋部17で覆われており、水の蒸発やごみ、枯れ葉など異物の混入を防止している。
【0037】
図2は、本考案による図1の装置を正面から見た説明図である。太陽電池パネル11は支持体12上に上部止め具13および下部止め具14により固定されている。説明の都合上、下方の貯水部16には伝熱媒体15が露出して挿入されている様子を示しているが、伝熱媒体15は貯水部16の蓋部17などにより覆われているか、または以下に述べる図3の実施例で示すように間隙を設けず貯水部16内に浸している方が望ましい。
【0038】
この構成による冷却装置を有する太陽発電装置10は必要に応じて貯水部16の端部を開放し、横方向へ増設することが可能である。貯水部16の最終端部は封止されており、他の端部には水を供給するための給水バルブ20および排水バルブ21とが連結されるように構成されている。
【0039】
給水バルブ20には水道などに結合されて水が供給されるようになっており、また、排水バルブ21を開閉することで貯水部16内の排水や水の量を調節することもできる。また、雨水の貯蔵タンクなどと連結して貯蔵した雨水を利用してもよい。
【0040】
また、太陽電池パネル11の下方にはパネル上に降り注いだ雨水を収集し、貯水部16へ導くための導水路22が数か所に設けられており、パネル上の雨水やパネル洗浄時に使用した水を貯水部16へ導入する。この導水路22はパイプ状のもので貯水部16へパネル11に注がれた水を逃がす構成であればいかなるものでも差支えない。雨水の導水についてはパネル11の表面または太陽電池モジュールの表面に凸凹の雨水導水路を設け雨水を収集することもできる。
【0041】
上記の給水バルブ20や排水バルブ21をあえて設置しない場合でも、貯水部16には太陽電池パネル11に降り注いだ雨水が導水路22により収集、貯水されそれを利用することも可能である。また、太陽電池パネル11の表面は発電効率を保つために都度水などで清浄する必要があり、この清浄用水を利用することもできる。
【0042】
図3は、本考案による装置の貯水部を説明する図である。図3の装置においては、太陽電池パネル11および伝熱媒体15の下端部が貯水部16の内部に配設されている。さらに、貯水部16の蓋部17の太陽電池パネル11側には封止材31が取り付けられて、蓋部17を閉じると太陽電池パネル11との間隙を塞ぐように構成されている。
【0043】
この封止材31として伝熱媒体15の素材とほぼ同様の吸水機能性材からなる吸水材を利用してもよい。この吸水材を封止材31として設置すると吸水材が水を吸い上げ、貯水部16が封止され水の蒸発を防止する効果が得られる。
【0044】
貯水部16の上部には貯水された水がオーバーフローするのを防止するためにオーバーフロー管32が取り付けられており、貯水部16内でのオーバーフローが生じないようになっている。
【0045】
図4は、太陽電池パネルの太陽光非照射面(裏側)の構成を示す説明図である。太陽電池パネル11の裏側には伝熱媒体15がパネルに密着して配置されている。太陽電池パネル11および密着配置された伝熱媒体15は支持体12により保持されている。太陽光発電装置は伝熱媒体15による伝熱効果を上げるため出来るだけ通気を良くする必要がある。
【0046】
本考案の装置においては太陽電池パネル11の裏側で伝熱媒体15の下に通気板41を配置している。太陽光発電装置は屋根上で斜めに設置されることが多く、伝熱媒体15の冷却効果を良くするために空気が下方から上方へ流れる必要がある。
【0047】
また、太陽電池パネル11が屋根上に設置されたような場合、そのパネル11の中央上部が最も温度が上昇する傾向がある。そのため、通気板41は図4の通り太陽電池パネル11の中央から上部にかけて空気の流れが生じるように斜めに配置されている。これら通気板41を設けることで、空気の流れを制御し、伝熱媒体15で吸水された水の蒸発効果を上げることができる。
【0048】
図5は、本考案による太陽光発電装置を屋上に取り付けた図である。図5においては、太陽電池パネル11が屋根41上に配置され、雨どいを貯水部16として利用している。図5ではパネル11の下方から伸びた伝熱媒体15が露出して貯水部16へ達しているが、図3で説明したようにパネル11の下部および伝熱媒体15の下部を貯水部16の内部へ挿入させて封止した方がより効果的であることは言うまでもない。
【0049】
太陽電池パネル11の設置にあたっては、太陽光照射を受けるようパネル面を設置すると共に、パネル11の裏面はできるだけ通気性が良いように取付け支持体42などで浮かせて設置されている。また、屋根41に降り注いだ雨水は雨どいと兼用された貯水部16へ貯水される構造となっている。
【0050】
雨水は貯水部16で所定量だけ貯水されると、雨どい溜部43のオーバーフロー防止穴(図示せず)から排水雨どい44を介して排水される。また、この雨どい溜部43には給水バルブ20を介して水道水が給水されるようになっており、水が不足の場合や洗浄時には水道水を給水する構成となっている。さらに、排水雨どい44には排水バルブ21が連結されており、この排水バルブ21の操作により貯水部16内の水を排水雨どい44へ流すことができる。
【0051】
このような構成により雨どいを兼ねた貯水部16の水は伝熱媒体15により浸透圧吸水され気化熱として蒸発する。この気化熱により太陽光パネル11が冷却され、太陽光発電装置の発電効率の向上が図れる。
【0052】
太陽光発電装置により発電出力は直流であり、インバータ(パワーコンディショナー)45により交流変換され家庭内の分電盤46を介して家庭内電力として利用したり、蓄電池47に一旦蓄電し必要時に利用することができる。
【0053】
(他の実施例)
本考案の構成は、太陽電池パネル11の温度上昇による発電効率低下を防止するための冷却装置を提供し発電効率の向上を図るものであるが、外気温が低下した場合の太陽光発電装置の解凍や積もった雪を溶かすのにも利用することができる。
【0054】
太陽光発電装置は野外で使用するため、外気温が低下した場合など、氷結や積雪により太陽電池パネルの表面ガラスや構成部材が損傷したりして利用できなくなる恐れがある。特に、寒冷地などでは冬場での利用が積雪や氷結などにより利用できなくなる恐れが生じている。
【0055】
本考案の他の実施例によれば氷結前または積雪前に温水などを貯水部16に供給することで温水を吸水機能性材15により吸収させ、太陽光発電装置全体を暖め、氷結または積雪による装置表面のガラスや太陽電池モジュールなどの表面材の破損を事前に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本考案の太陽電池発電装置によれば、極めて簡便な構成により安価で利便性の高い効果的冷却装置を提供することができ、太陽光発電装置の利用において温度上昇に伴う発電効率低下を抑えることが可能となり、極めて産業上の利用価値が高いものである。なお、本考案では太陽電池パネルを実施例として説明したが、太陽電池のセル、モジュールまたはその集合体であるアレイ、など利用目的に応じていずれの規模にも応用可能である。
【0057】
11 太陽電池パネル
12 支持体
13 上部留め具
14 下部留め具
15 伝熱媒体
16 貯水部
17 蓋部
20 給水バルブ
21 排水バルブ
22 導水路
31 吸水材
32 オーバーフロー管
41 通気隔壁
45 インバータ(パワーコンディショナー)
46 分電盤
47 蓄電池

(57)【要約】

【課題】太陽電池パネルまたはこれを用いた太陽光発電装置に利用される冷却装置を提供する。【解決手段】太陽電池パネル11を有する太陽光発電装置において、前記太陽電池パネル11の太陽光非照射面に配置された吸水機能性材と、前記吸水機能性材の下部に設けられた貯水部16とから成り、前記貯水部16の水を前記吸水機能性材を介して浸透させることにより前記太陽電池パネル11の冷却を行うことを特徴とする。


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