【0001】
本考案は、タンク型除湿剤の単位時間あたりの除湿能力を、大幅に高める除湿促進具に関する。
【0002】
従来から部屋、押入れ、クローゼット、靴箱及び収容棚等内の湿気を除去するために、水分を吸収すると液状になる潮解性を有する、塩化カルシウム等の除湿剤が多用されている。
【0003】
すなわち固形の塩化カルシウム等を容器に入れ、この固形の塩化カルシウム等が水分を吸収して液状になると、この液体を廃棄すると共に、新たに固形の塩化カルシウム等を補充することによって、繰返して使用できる除湿機が提案されている(特許文献1〜2等参照。)。また固形の塩化カルシウム等を容器に入れ、この塩化カルシウム等が水分を吸収して全て液状になった時点で廃棄する、いわゆる使い捨てのタンク型除湿剤も多用されている。
【0022】
本考案によるタンク型除湿剤の除湿促進具は、次の個々の効果の組合せによって、後述するように、タンク型除湿剤の単位時間当たりの除湿能力を、予想をはるかに超える程度まで高めることができる。すなわち送風機を容器の上側壁に形成された開口穴の上に配置することによって、タンク型除湿剤の上端面と、容器の上側壁の下面との高さ方向間隔を小さくすることができ、導入した外気の流速を高めることができ、後述する外気導入フィンから外気を吸い込むことができ、さらに導入外気攪拌フィンによる上下方向の蛇行を強めることができる。したがってタンク型除湿剤の上端面に沿って導入した外気を強く蛇行させることにより、タンク型除湿剤の単位時間当たりの除湿能力を、高めることができる。
【0023】
さらに言及すれば、送風機を容器の左側壁、右側壁または前側端に設けると、タンク型除湿剤の上端面と容器の上側壁の下面との間に、送風機の直径程度の間隔を確保することが必要になって、導入した外気の流速を高めることができず、したがって外気導入フィンから外気を吸い込むことも、更には導入外気攪拌フィンによる上下方向の蛇行も強めることも困難となる。ここでタンク型除湿剤の上端面と容器の上側壁の下面との間の間隔を狭めると、送風機から水平方向に導入された外気が、タンク型除湿剤の側面に遮られて、外気を有効に導入することが困難となる。
【0024】
容器の前側端の後側近傍において、この容器の上側壁の下面とタンク型除湿剤の上端面との間に、この容器の後側端に向って下方に傾斜する外気導入フィンを設けることによって、送風機から導入された外気の流れ方向を、タンク型除湿剤の上端面に沿って、この容器の後側端に向って流れるように誘導することができる。またこの誘導された外気によって、容器の前側端に形成された開口部から外気を導入することが可能となり、タンク型除湿剤の上端面に沿って蛇行する導入外気の総量を増加させることができる。したがってタンク型除湿剤の単位時間当たりの除湿能力を、さらに高めることができる。
【0025】
容器の上側壁に形成された開口部と、この容器の後側端との間において、この容器の上側壁の下面に導入外気攪拌フィンを垂設することによって、タンク型除湿剤の上端面に沿って後方に流れる外気を、上下方向に蛇行させることができる。
これにより導入した外気に強制的に乱流を発生させつつ、タンク型除湿剤の上端面に沿って後方に流すことができるため、単位時間当たりの除湿能力を、大幅に高めることができる。
【0026】
容器に底壁を設けないことによって、設置対象体の上に設置したタンク型除湿剤を跨いで被せるように、この容器を設置することが可能となるため、除湿促進具の構造がより簡易になると共に、取り扱いがより容易になる。
【0027】
少なくとも容器の上側壁を透明部材で形成することによって、タンク型除湿剤の潮解の進行状態を、容易に視認することが可能となって、タンク型除湿剤の交換時期等を容易に知ることができる。
【0028】
容器の左側壁及び右側壁に、搭載部材を所定の高さ位置に係止する係止手段をそれぞれ設け、この搭載部材にタンク型除湿剤を搭載するように構成することによって、このタンク型除湿剤の高さ寸法に応じて、このタンク型除湿剤の上端面と容器の上側壁の下面との間に、適正な高さ方向の間隙を確保することができる。
【0029】
容器の左側壁及び右側壁の内側面の所定の高さ位置に、それぞれ水平溝を設け、搭載部材をこの水平溝に挿入して、所定の高さ位置に係止して、この搭載部材にタンク型除湿剤を搭載するように係止手段を構成することによって、タンク型除湿剤の高さ寸法に応じて、このタンク型除湿剤の上端面と容器の上側壁の下面との間に、より容易に適正な高さ方向の間隙を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】タンク型除湿機の除湿促進具を側方から見た断面図である。
【図2】タンク型除湿機の除湿促進具を前方から見た一部断面図である。
【図3】タンク型除湿機の除湿促進具の上面図である。
【図4】実施例に係るタンク型除湿機の除湿促進具を側方から見た断面図である。
【図5】実施例に係るタンク型除湿機の除湿促進具の上面図である。
図1〜図3を参照しつつ、本考案によるタンク型除湿機の除湿促進具の一例を説明する。さて図1に示すように、このタンク型除湿機の除湿促進具は、タンク型除湿剤Aを収納する容器1と送風機2とを備えている。送風機2は、インダクションモーター21で駆動される軸流ファン22を有し、容器1の上側壁11の前側端の近傍に形成された開口部11aの上に、円筒状のファンダクト23を介して配置される。すなわち開口部11aは、その前側端が上側壁11の前側端の、ほぼ直後に位置する個所に設けられる。またインダクションモーター21は、家庭用100Vの交流電気で駆動される。
【0032】
容器1は、立方体であって、透明のアクリル樹脂の平板を組み合わせて形成してある。すなわち容器1は、上側壁11、左側壁12、右側壁13及び底壁14で構成され、この前側端及び後側端は、それぞれ全面が開口部になっている。なおファンダクト23は、アルミニウム製でインダクションモーター21のケースと一体形成され、容器1の上側壁11の上面にボルトで固定される。
【0033】
容器1の前側端15の後側近傍には、この容器の上側壁11の下面とタンク型除湿剤Aの上端面との間に、この容器の後側端16に向って下方に傾斜する2枚の外気導入フィン3、3が設けてある。外気導入フィン3、3は、アクリル樹脂の平板であって、容器1の左側壁12及び右側壁13の内側面に、それぞれ両端部が固定されて支持されている。また上側の外気導入フィン3は、下側の外気導入フィン3より、長さが短く、かつ下方への傾斜角が大きくなるように構成されている。なお容器1の上側壁11に形成された開口部11aの前側縁に接するように、もう一つの外気導入フィン3が設けてある。もう一つの外気導入フィン3は、容器1の上側壁11の下面に垂設され、その下に位置する傾斜した外気導入フィン3の上面に沿って流れる導入空気の流速を速めて、この外気導入フィンから外気を導入し易くしている。
【0034】
容器1の上側壁11に形成された開口部11aと、この容器の後側端16との間には、この容器の上側壁の下面に3枚の導入外気攪拌フィン4、4、4が垂設されている。なお導入外気攪拌フィン4、4、4は、アクリル樹脂の平板であって、容器1の前側端15から後側端16に向う方向に直交するように、所定の間隔を隔てて、それぞれ配置されている。また導入外気攪拌フィン4、4、4は、容器1の前側から後側端16に向って、順次高さ寸法が大きくなっており、この容器の上端壁11の下面とタンク型除湿剤Aの上端面との間の間隔が、順次狭くなっている。
【0035】
容器1の左側壁12及び右側壁13の内側面には、3段の水平溝(係止手段)12a、13aがそれぞれ設けてあり、この水平溝にアクリル樹脂の平板からなる搭載部材5を挿入して係止する。なお3段の水平溝(係止手段)12a、13aは、ほぼ同等の高さ方向間隔を隔てて形成してあり、さらに搭載部材5が不用意に抜け落ちない程度の嵌め合い寸法に形成してある。
【0036】
なお容器1には、底壁14を設けないように構成することもできる。さらに3段の水平溝(係止手段)12a、13aを設けないように構成することもできる。かかる場合には、タンク型除湿剤Aを設置対象体Bの表面に直接設置し、容器1を、このタンク型除湿剤を跨いで被せるようにして、この設置対象体の上に設置する。なおタンク型除湿剤Aの高さ位置は、このタンク型除湿剤の下に、所定の厚さを有する支持台を挿入することによって、容易に調整できる。
【0037】
次に上述したタンク型除湿剤の除湿促進具の作用について説明する。さて送風機2は、図1に示す矢印の方向に、容器1の上側壁11に形成された開口部11aから、タンク型除湿剤Aの前側上端面に向けて外気を導入する。送風機2によって導入された外気は、2個の外気導入フィン3、3によって流れ方向を偏向されて、容器1の後側端16に向って流れる。ここで偏向された外気が、容器1の後側端16に向って速い速度で流れると静圧が下がり、これらの外気導入フィンの入り口、すなわち容器1の前側端15を構成する開口部から外気が導入される。そして送風機2から導入された外気と、容器1の前側端15を構成する開口部から導入された外気とは、共にタンク型除湿剤Aの上端面に沿って、この容器の後側端16を構成する開口部から流出する。
【0038】
3個の導入外気攪拌フィン4、4、4は、タンク型除湿剤Aの上端面に沿って後方に流れる外気を、図1に示す矢印のように、それぞれ上下方向に蛇行させ、強制的に乱流を発生させつつタンク型除湿剤Aの上端面に沿って後方に流す。したがって、導入した外気をより多くタンク型除湿剤Aの表面に接触させることができ、単位時間当たりの除湿能力を、大幅に高めることが可能となる。
透明のアクリル樹脂製の厚さ5mmの平板を用いて、図4〜図5に示す除湿促進具を作製した。なお容器の前側端、後側端、及び底面は、それぞれ壁を設けずに、全面を開口部とした。電動送風機は、ミネベアモーター株式会社の製品「2412PS−10W−B30」を使用した。この電動送風機は、内径58mmの円筒状のファンダクト内で、軸流ファンを毎分2000回転させて、最大0.2m3/分の送風能力を発揮する。
【0040】
窓を解放した部屋の床に、タンク型除湿剤を2個設置して、その一方にのみ、上述した除湿促進具を被せた。タンク型除湿剤は、エステー株式会社の製品「ドライペット(同社の登録商標)、品名スキット」を使用した。このタンク型除湿剤の吸湿容量(タンク容器の容量)は、350ミリリットルである。
【0041】
この2個のタンク型除湿剤が湿気を吸収して潮解する様子を、70時間余にわたって比較観察した。なお室温は28℃前後であり、相対湿度は55〜58%、絶対湿度は15〜17%で推移した。また潮解の状況を観察し易いように、タンク型除湿剤の側面を覆う包装紙を剥がした。
【0042】
除湿促進具を使用しないタンク型除湿剤では、テスト開始から58時間余経過しても、塩化カルシウムが多少湿った感触がする程度であり、70時間余経過しても、タンク型除湿剤の容器の底面に、潮解液の水滴が溜まる程度であった。一方除湿促進具を使用したタンク型除湿剤では、テスト開始から10時間余経過した時点で、容器の底面から約2cmの深さまで潮解液が溜まり、17時間余経過した時点では、潮解液で容器が満杯になった。
【0043】
以上の比較観察の結果から概算すると、本考案によるタンク型除湿剤の除湿促進具を使用すると、単位時間当たりの除湿能力を大幅に増加できることが期待できる。
【0044】
(概算1)
本実施例で使用したタンク型除湿剤は、その製品の注意書によると、使用期間、すなわち塩化カルシウムが湿気を吸収して全て潮解するまでの期間は、3ヶ月〜5ヶ月と記載されている。そこで本実施例においても、除湿促進具を使用しないタンク型除湿剤は、3ヶ月〜5ヶ月で全て潮解すると仮定する。一方除湿促進具を使用したタンク型除湿剤は、上述したように、ほぼ17時間経過後には、全て潮解している。よって除湿促進具を使用した場合は、除湿促進具を使用しない場合に較べて、単位時間あたりの除湿能力が次のように高くなる。
(3ヶ月〜5ヶ月x24時間)/17時間=(127〜212倍)
すなわち平均すると、単位時間あたりの除湿能力が、おおよそ170倍程度も高くなる。
【0045】
(概算2)
上述したように、除湿促進具を使用しないタンク型除湿剤は、テスト開始から58時間余経過しても、塩化カルシウムが多少湿った感触がする程度であり、70時間余経過しても、タンク型除湿剤の容器の底面に、潮解液の水滴が溜まる程度であった。そこでテスト開始から58時間後に、塩化カルシウムの潮解が始まり、70時間経過したときの潮解液の水滴の量を、1ミリリットルと多めに仮定すると、潮解液が1cc生成される時間は、70時間−58時間=12時間となる。したがってタンク型除湿剤の350ミリリットルの容器に潮解液が満杯になるまでの時間は、
12時間x(350ミリリットル/1ミリリットル)=4200時間
となる。一方除湿促進具を使用したタンク型除湿剤は、ほぼ17時間経過後には、全て潮解している。よって除湿促進具を使用した場合は、除湿促進具を使用しない場合に較べて、単位時間あたりの除湿能力が次のように高くなる。
4200時間/17時間 = 247倍
【0046】
以上の概算によれば、除湿促進具を使用した場合には、除湿促進具を使用しない場合に較べて、単位時間あたりの除湿能力が、200倍前後まで高くなることが期待できる。簡単な構造でかつ安価な使い勝手の良い除湿促進具によって、単位時間あたりの除湿能力が、200倍前後も高くなるという効果は、本考案者の予測をはるかに超えるものであった。
【0047】
簡単で使い勝手の良い構造によって、タンク型除湿剤の単位時間あたりの除湿能力を大幅に高めることができるので、除湿に関する産業に広く利用可能である。
1 容器
11 上側壁
11a 開口部
12a 水平溝(係止手段)
13a 水平溝(係止手段)
14 底壁
15 前側端
16 後側端
2 送風機
3 外気導入フィン
4 導入外気攪拌フィン
5 搭載部材
A タンク型除湿剤
B 設置対象体
【課題】タンク型除湿剤の単位時間あたりの除湿能力を大幅に増加でき、簡単で使い勝手の良い除湿促進具を提供する。【解決手段】前側端15及び後側端16を開口した容器1の上側壁11に送風機2を設け、水平溝12aに挿入した搭載部材5にタンク型除湿剤Aを搭載する。容器1の前側端15後方に、下方に傾斜する外気導入フィン3を2個設け、この容器の後方部分に3個の導入外気攪拌フィン4を設ける。送風機2により導入された外気は、外気導入フィン3によって後方に誘導され、この外気導入フィンを介して前側端15から外気を導入する。タンク型除湿剤Aの上端面に沿って後側端16に流れる導入外気は、導入外気攪拌フィン4によって上下方向に蛇行し、タンク型除湿剤Aの単位時間あたりの除湿能力を大幅に増加させる。
インターネット上にあるこの特許番号にリンクします(発見しだい自動作成):