(54)【考案の名称】ゴルフクラブ及びゴルフクラブヘッドの調整部材

(73)【実用新案権者】運動科学研究所株式会社

(72)【考案者】【考案者】

[fig000002]
【選択図】図1

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は、中空のゴルフのクラブヘッドの振動を調整するヘッド調整部材及び前記調整部材を取り付けたゴルフクラブに関するものである。

【従来の技術】

【0002】
中空のゴルフクラブヘッドにおいては、ソール部分等のコア部に単数又は複数の貫通螺孔を形成して、当該螺孔に錘を羅装してクラブヘットの重心位置を調整するものが知られており、更にヘッドの振動吸収や共鳴(打撃音改善)のための部材を当該螺孔に装着することが提案されている。
【0003】
特許文献1(特開2004−222911号公報)には、減衰率の低い高弾性鋼によって成形された音叉形状の部材である共鳴調節部材を前記貫通螺孔に装着して、打撃音を残響させ音圧を保ち大きな打撃音を生じさせる手段が開示され、更に複数の貫通螺孔のうちから共鳴調節部材の取り付ける貫通螺孔を選択することでゴルフボールの弾道調整(スライス傾向、フック傾向、低弾道傾向、高弾道傾向のあるゴルファーに対する弾道調整)を行う手段が開示されている。
【0004】
また特許文献2(特開2006−122334号公報)には、貫通螺孔に螺装される減衰部材の先部に凹欠部を設け、この凹欠部に振動吸収部材を収容する構造が開示されており、減衰部材の重さ・振動吸収効果を制御(多種類の部材から選択)することによって、クラブヘッドが有するスイングにおける慣性モーメントの変更も可能であることが示されている。
【0005】
更に特許文献3(特開2008−142471号公報)には、貫通螺孔に変えて雌ネジを備えた凹部とし、前記凹部内に振動吸収部材(弾性部材)を充填し、凹部を閉じる蓋部材を装着し入る構造が開示されている。
【0006】

【効果】

【0024】
本考案の構成は上記のとおりで、中空のクラブヘットに振動特性の異なる調整部材を選択取り付けすると共に、更に取り付けた調整部材において、重心位置の微調整によって振動特性の微調整が可能となり、振動特性が微妙に異なる(形状の異なる)振動体をより多く用意することなく、プレーヤーの感性に細かく対応できるゴルフクラブを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本考案の第一実施形態(第一実施例)の分解斜視図。
【図2】同使用状態(クラブヘッドへの取付状態)の説明図。
【図3】同拡大断面図。
【図4】同第二実施例の説明図で(イ)は分解斜視図、(ロ)は平面図。
【図5】同第三実施例の断面図。
【図6】同第二実施形態(第四実施例)の全体斜視図。
【図7】同第三実施形態(第五実施例)の要部の一部切断分解正面図。
【図8】同要部の取り付け状態の断面図。
【図9】試験に使用した調整部材の説明図。
【図10】試験の試打者のハンディ説明表。
【図11】同重心位置変更におけるクラブ使用時の感想データ表。
【図12】同表。
【図13】調整部材のスリット長の変更におけるクラブ使用時の感覚データ表。
【図14】同表。

【0026】
次に本考案の実施形態について説明する。図1乃至3に記載したのは、本考案の第一実施形態の第一実施例で、図4は同第二実施例を示し、図5が同第三実施例を示し、図6が第二実施形態(第四実施例)を示すもので、これらの実施形態に係る調整部材は、既存の中空のクラブヘッドAの貫通螺孔Bに装着して使用するものである。
【0027】
既存の中空クラブヘッドAは、一般にフェース部、クラウン部、ホーゼル部、サイド部、ソール部を備えており、各部を各別に形成し或いは複数を一体に形成し、これを組み合わせているもので、特にクラブヘッド自体の重心位置を選択設定できるように錘を装着する貫通螺孔Bを単一個所或いは複数か所に備えているもので、前記貫通螺孔Bは当該クラブによって種々形状のものが存在するが、螺孔装着する構造が共通している。
【0028】
第一実施例の調整部材は、装着体1と振動体2で構成されるもので、装着体21は、当該クラブヘッドAに装着されていた既存の錘(蓋体機能を備えているので、以下「錘蓋」と表示する)と同一外形であり、当該クラブヘッドAの貫通螺孔Bに装着できるようにしたものである。
【0029】
即ち外周面の所定位置に貫通螺孔Bに螺合できる外ネジ部11を設け、更に中心に上下貫通する装着孔(内ネジ部)12を設け、取付時にクラブヘッドA内を密封するパッキン13を付設してなるものである。勿論既存の錘蓋をそのまま利用して装着孔12を設けるようにしても良い。
【0030】
振動体2は、全体が貫通螺孔BからクラブヘッドAの内部に挿入できる大きさで、先端側の頭部21と基端側のネジ軸部22で構成され、頭部21は、先端側を筒状に形成すると共に、先端から適宜な深さのスリット211を設けて振動部212を形成してなるものである。尚振動体2は頭部21の諸寸法の異なる複数を部品として用意しておく。
【0031】
ネジ軸部22は、略装着孔12の全長と下記の緩み止めナット222の厚さを加えた長さに対応させてなり、端部(下方先端)に溝部(回転操作部)221を設け、更にネジ軸部22に緩み止めナット222を付設したものである。
【0032】
而して前記調整部材は、適当と認められる振動体2のネジ軸部22を装着体1の装着孔12に螺合して両者を一体化し、既存のゴルフクラブAから錘を取り外した個所に振動体2側から差し入れて、装着体1を貫通螺孔Bに螺合緊締してクラブヘッドAと一体化させるものである。
【0033】
そこで当該ゴルフクラブの使用者(プレーヤー)のスイングの状態に合わせて、適度な大きさ・形状(頭部の寸法、筒状の深さ、スリットの長さ)を備えた振動体2を選択し、更に使用者にスイングを実施させ、外部から装着孔12に操作部材(例えばネジ回し)を差し入れ、溝部(回動操作部)を操作すると、調整部材の全長が変わって、調整部材の重心位置が微妙に変化する。
【0034】
従って前記の重心微調整とスイング(打撃)を交互に繰り返し行って、使用者の最も好む位置を確認した後、一旦調整部材を取り外し、緩み止めナット222を緊締して、振動体2を固定し、再度クラブヘットAに取り付けるものである。
【0035】
前記の調整が効果を有するか否かの検証を行うため、頭部径(Φ)6mm、頭部長さ(L1)22mm、筒状部の深さ(L2)12mm、スリットの長さ(L3)3mm、ネジ軸部のピッチ1mm/360°の振動体を使用し、90度きざみ(長さを0.25mm毎伸長)で、図10に示したプレーヤーによって試打してもらった。
【0036】
その結果が、図11,12の感想表のとおりであり、振動体2の装着体からの突出長さを0.25mmの細かい調整でも、プレーヤーのスイング感想は変化するので、この調整によって個人差のあるスイング感覚に対応できることが確認できた。
【0037】
尚微調整手段による振動体2の突出長の変化は2ミリ以下の場合が多いので、前記の緩み止めナット222に替えて、圧縮パッキンを採用しても不都合はない。
【0038】
図4は第二実施例で、振動体2aの頭部21aを板状にして先端よりスリット211aを設けて、板状の振動部212aとしたもので、前記第一実施例の筒状の振動部212に比較して、大きく振動し易く、スイング開始時のヘッド振動に大きな影響を与えやすい。
【0039】
勿論微調整手段は、前記第一実施例と同様に、外部から装着孔12を通して、ネジ軸部22の基端に設けた溝部221を回動操作するものである。
【0040】
また図5は第三実施例で、振動体2bの頭部21b全体が振動部として作用するようにしたもので、振動体2bのクラブヘッドAの内方突出調整で微調整することは、前記の第一、二実施形態と同様である。
【0041】
図6は第二実施形態(第四実施例)を示すもの、前記第一実施形態のように装着体1と振動体2,2a,2bの部品構成を採用して、振動体の突出位置で微調整するものでなく、別の調整手段を採用したものである。
【0042】
この第二実施形態(第四実施例)は、前記の装着体1と対応する装着部3と、装着部3連続する細軸部4と、細軸部4に螺装される錘部5を備えてなるものである。
【0043】
装着部3は、既存クラブヘッドAに装着されていた錘蓋と同一の外ネジ部31を備えて、当該クラブヘッドAの貫通螺孔Bに装着できるようにしたものであり、更に細軸部4は、前記装着部3と一体にして全体をボルト形状に形成したもので、外周にネジ部41を刻設してなり、前記ネジ部41には、筒状の錘部5を螺装したものである。
【0044】
特に筒状の錘部5は、貫通螺孔Bから差し入れられる大きさにして、その大小(直径・全長)や材質(比重)によって複数形成し、その中から選択するようにしても良い。
【0045】
また錘部5には直径方向から中心に向かう止めビス51を付設して緩み止めとしたり、複数の錘部5を螺合装着して互いにダブルロック構成としても良い。
【0046】
而して前記調整部材(第四実施例)は、適当と認められる錘部5を細軸部4に螺合装着し、既存のゴルフクラブAから錘蓋を取り外した個所に差し入れて、装着部3の外ネジ部51を貫通螺孔Bに螺合緊締してクラブヘッドAと一体化させる。
【0047】
次に当該ゴルフクラブの使用者(プレーヤー)に、錘部5の位置を変更し、その都度スイングしてもらい、最プレーヤーに最適な錘部5の位置を決定し、当該位置で錘部5を固定し(止めビスによる固着など)、クラブヘッドAに再度取り付けるものである。
【0048】
従って、錘部5の選択と、錘部5の位置調整のダブル調整で、プレーヤーの最も好むスイング感を与えるゴルフクラブを提供できたものである。
【0049】
また図7,8は第三実施形態(第五実施例)で、この実施形態は既存のゴルフクラブを採用せずに、独自のクラブヘッドを採用する場合に本願考案を適用する例を示したものである。
【0050】
ゴルフクラブは、従前と同様にグリップ、シャフト、中空のクラブヘッドで構成され、特にクラブヘッドAには、貫通螺孔部6を形成したもので、前記貫通螺孔部6には、蓋体7、装着体8及び振動体9で構成される調整部材を装着するものである。
【0051】
貫通螺孔部6は、クラブヘッドAのソール適宜個所に設けるもので、従前の錘蓋装着用のものとほぼ同一であるが、やや内方に深く形成し、下方(外側)に段差を有する蓋収納凹部61を形成し、中間部に貫通螺孔62を設け、先端に貫通透孔63を設けたものである。
【0052】
蓋体7は、蓋体収納凹部61と対応する蓋部71と、貫通螺孔62に対応する外ネジ部72を備え、蓋部底面(外面)に操作角穴73を穿設し、蓋部外周にパッキン74を装備させたものである。
【0053】
装着体8は、貫通螺孔62に螺合できる外ネジ部81を設けると共に、貫通透孔63から突出可能な嵌合部82を形成し、更に中心に上下貫通する装着孔(内ネジ部)83を設けたものである。
【0054】
振動体9は、前記実施形態のものと同様に、全体が貫通透孔63からクラブヘッドAの内部に挿入できる大きさで、先端側の頭部91と基端側のネジ軸部92で構成され、頭部91は、先端側を筒状に形成すると共に、先端から適宜な深さのスリット911を設けて振動部912を形成してなるものである。尚前記した振動体9は、各実施形態の振動体と同様に頭部91の諸寸法の異なる複数を部品として用意しておく。
【0055】
またネジ軸部92は、前記装着孔83の全長より充分長く設け、端部(下方先端)には、溝部(回転操作部)921を設けておく。
【0056】
而して振動体9のネジ軸部92を装着体8に螺合し、振動体9をクラブヘッドA内に差し入れ、装着体8を貫通螺孔62に螺合して、嵌合部82を貫通透孔63に嵌合して装着体8をクラブヘッドAと一体化する。
【0057】
更に蓋体7を貫通螺孔62に螺合装着して、クラブヘッドAに形成された貫通螺孔部6を閉塞するものである。
【0058】
プレーヤーのスイングによる調整は、前記の振動体9の選択と、蓋体7を外して溝部921使用して振動体9の螺合位置を操作すると、振動体9の突出長さが変わって、調整部材の重心位置が微妙に変化する。
【0059】
従って前記の重心微調整とスイング(打撃)を交互に繰り返し行って、使用者の最も好む位置を確認した後、蓋体7を装着して使用状態とするものである。
【0060】
1 装着体
11 外ネジ部
12 装着孔(内ネジ部)
13 パッキン
2,2a,2b 振動体
21,21a,21b 頭部
211,211a スリット
212,212a,212b 振動部
22 ネジ軸部
221 溝部(回転操作部)
222 緩み止めナット
3 装着部
31 外ネジ部
4 細軸部
41 ネジ部
5 錘部
51 止めビス
6 貫通螺孔部
61 蓋収納凹部
62 貫通螺孔
63 貫通透孔
7 蓋体
71 蓋部
72 外ネジ部
73 操作角穴
74 パッキン
8 装着体
81 外ネジ部
82 嵌合部
83 装着孔(内ネジ部)
9 振動体
91 頭部
911 スリット
912 振動部
92 ネジ軸部
921 溝部(回動操作部)

(57)【要約】

【課題】ゴルフプレーヤーのスイング感性に対応したゴルフクラブを提供する。【解決手段】中空のクラブヘッドAに設けた貫通螺孔Bに螺装すると共に、中心に装着孔12を形成した装着体1と、貫通螺孔からクラブヘッド内部に挿入できる大きさで、先端側に振動主体となる頭部21を形成すると共に、前記頭部の基端側に、前記装着孔に螺装可能なネジ軸部22を設けた振動体2を備えた調整部材をクラブヘッド装着すると、スイング時におけるヘッドの振動に対して前記振動体2の振動が作用する。振動体の選択とネジ軸部の螺合深さの調整で、微細な振動特性の調整が可能となる。


【パテントレビュー】

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【インターネット特許番号リンク】

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