(54)【考案の名称】人工股関節用ボールトライアル

(73)【実用新案権者】日本メディカルマテリアル株式会社

(72)【考案者】【考案者】

[fig000002]
【選択図】図2

【概要説明】

【分野】

【0001】
本考案は、股関節の一部または全部を人工股関節に置換する手術において用いられ、ボール状に形成されるとともに、大腿骨の髄腔部に挿入される人工股関節用ステムまたはステムトライアルにおいて大腿骨から突出して配置されるネック部分に対して着脱可能に設けられる人工股関節用ボールトライアルに関する。

【従来の技術】

【0002】
人工股関節置換術あるいは人工骨頭置換術等のように、股関節に異常が認められた患者に対して、その股関節の一部または全部を人工股関節に置換する手術が行われている。このような手術においては、人工股関節のインプラントである骨頭ボールを、患者の状況に応じて適切に選択するために、ボール状に形成された人工股関節用ボールトライアル(以下、単に、「ボールトライアル」ともいう)が用いられ、仮整復が行われる。
【0003】
このボールトライアルは、骨盤の寛骨臼に固定される人工股関節用カップに対して摺動可能に収容され、人工股関節のインプラントであって大腿骨の髄腔部に挿入される人工股関節用ステム(以下、単に、「ステム」ともいう)において、またはこのステムの配置等を検討するために用いられるステムトライアルにおいて、大腿骨から突出して配置されるネック部分に対して着脱可能に嵌合されて用いられる。
【0004】
股関節の一部または全部を人工股関節に置換する手術の際には、特許文献1に開示されるようなボールトライアルを用いた検討が術者によって行われることで、ネック部分に対する骨頭ボールの位置関係であるオフセットを患者の状況に応じて適切に設定可能な骨頭ボールが選択される。なお、ボールトライアルを用いた仮整復では、人工股関節としての可動域や脱臼のし難さ、大腿骨と骨盤との間で軟部組織によって生じる緊張力などが、オフセットの設定が異なるボールトライアルがステムまたはステムトライアルのネック部分に対して着脱されて組合わされながら検討されることになる。
【0005】

【効果】

【0014】
本考案によれば、人工股関節用ボールトライアルは、ハット部材とスリーブ部材とを含む。ハット部材は、患者の骨盤の寛骨臼に固定される人工股関節用カップに嵌合されて、該人工股関節用カップに接触する、球面の一部を成す摺動面を有する。スリーブ部材は、患者の大腿骨の髄腔部に挿入される人工股関節用ステムの、大腿骨から突出するネック部分に挿入されて、ハット部材に着脱可能に嵌合する。このように構成される人工股関節用ボールトライアルでは、人工股関節用カップとの接触部分となるハット部材の表面に傷が発生した場合に、人工股関節用ステムのネック部分に挿入されるスリーブ部材と独立して、ハット部材のみを交換することができる。特に、人工股関節用ボールトライアルは、一般的には樹脂により形成されて傷つきやすいものであるが、金属またはセラミックスから成るハット部材とすることによって、ハット部材に傷が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本考案の一実施形態である人工股関節用ボールトライアル1の構成を示す分解斜視図である。
【図2】人工股関節について、大腿骨および骨盤の一部とともに模式的に示す図である。
【図3】図1に示す人工股関節用ボールトライアル1の断面図である。
【図4】ハット部材2の断面図である。
【図5】ハット部材2を図4の断面図を正面から見た図である。
【図6】ハット部材2の左方から見た側面図である。
【図7】ハット部材2の底面図である
【図8】スリーブ部材3の正面図である。
【図9】スリーブ部材3を図8の左方から見た側面図である。
【図10】スリーブ部材3の平面図である。

【0016】
以下、本考案を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。本考案は、患者の股関節の一部または全部を人工股関節に置換する手術において用いられ、骨盤の寛骨臼に固定される人工股関節用カップ(以下、単に「カップ」ともいう)に対して摺動可能に収容され、大腿骨の髄腔部に挿入される人工股関節用ステム(以下、単に「ステム」ともいう)またはステムトライアルにおいて大腿骨から突出して配置されるネック部分に対して着脱可能に嵌合されて用いられる、人工股関節用ボールトライアルとして、広く適用することができるものである。
【0017】
図1は、本考案の一実施形態である人工股関節用ボールトライアル1の構成を示す分解斜視図である。図2は、人工股関節について、大腿骨および骨盤の一部とともに模式的に示す図である。図1に示す人工股関節用ボールトライアル(以下、単に「ボールトライアル」ともいう)1は、患者の股関節を図2に示すような人工股関節100に置換する手術である人工股関節置換術において用いられる。
【0018】
ボールトライアル1の説明にあたり、まず、ボールトライアル1が適用される人工股関節置換術によって股関節に対して置換される人工股関節100について説明する。図2に示すように、人工股関節100は、ステム103と、骨頭ボール104と、カップ105とを備える。
【0019】
前記ステム103は、軸状の部材として形成され、たとえば、先端側が大腿骨101の髄腔部101aに挿入されて、骨セメント106により固定される大腿骨コンポーネントとして構成される。そして、ステム103における大腿骨101に挿入される側と反対側の端部には、大腿骨101から突出して配置されるネック部分103aが設けられている。このネック部分103aには、大腿骨101から突出して延びる方向である軸方向に対して斜めに形成されたテーパ面をその側面において有するテーパ部103bが設けられている。なお、テーパ部103bにおけるテーパ面は、円錐曲面の一部を構成する曲面として構成されている。これにより、テーパ部103bは、その端部側に向かって断面積が徐々に減少するように形成されている。
【0020】
骨頭ボール104は、骨盤102の寛骨臼102a側に配置されて球状に形成されたコンポーネントとして構成される。そして、骨頭ボール104には、嵌合用孔部104aが設けられている。骨頭ボール104は、この嵌合用孔部104aにおいて、ステム103のネック部分103aに対して嵌合することで、ステム103に固定される。
【0021】
カップ105は、骨盤102の寛骨臼102aに固定されるとともに、骨頭ボール104が摺動するように配置され、シェル105aおよびライナー105bを有する二層構造のコンポーネントとして構成される。シェル105aは、寛骨臼102aに取付けられる半球殻状の部材として設けられる。ライナー105bは、シェル105aよりも小径の半球殻状の部材として設けられ、シェル105aの寛骨臼102a側と反対側の内面に接触して取付けられる。
【0022】
ライナー105bは、たとえば、ポリエチレンなどの樹脂によって形成される。そして、ライナー105bのシェル105a側と反対側の内面に対して、骨頭ボール104の外形の球面部分が摺動するように配置される。なお、ライナー105bは、骨頭ボール104の摺動に伴う摩耗粉の発生を抑制するために、骨頭ボール104と摺動する内面107が、ホスホリルコリン基を有する重合性単量体がグラフト結合された高分子材料から成るように構成してもよい。このようなホスホリルコリン基を有する高分子材料は、たとえば、特許第4156945号公報に記載されるものを用いることができる。
【0023】
図1に示すボールトライアル1は、上述した人工股関節100を設置する人工股関節置換術の際に用いられる。そして、この人工股関節置換術の際に、術者が、ステム103のネック部分103aに対する骨頭ボール104の位置関係であるオフセットを患者の状況に応じて適切に設定可能な骨頭ボール104を選択する検討を行うために、ボールトライアル1が用いられる。
【0024】
ボールトライアル1は、詳細については後述するが、ステム103におけるネック部分103aのテーパ部103bに対して着脱自在に構成されており、術者によって、ネック部分103aのテーパ部103bに対する取付け作業と取外し作業とが適宜繰返されながら用いられることになる。なお、人工股関節置換術の際には、適切なオフセットに設定可能な骨頭ボール104を選択する検討のために、サイズの異なる複数のボールトライアル1が用いられる。すなわち、ボールトライアル1を用いた仮整復では、人工股関節100としての可動域や脱臼のし難さ、大腿骨101と骨盤102との間で軟部組織によって生じる緊張力などが、オフセットの設定が異なるボールトライアル1がネック部分103aのテーパ部103bに対して着脱されて組合わされながら検討されることになる。
【0025】
本実施形態のボールトライアル1は、カップ105に対して摺動可能に収容され、ステム103におけるネック部分103aのテーパ部103bに対して着脱自在に嵌合されるように構成されている。
【0026】
図3は図1に示す人工股関節用ボールトライアル1の断面図である。本実施形態のボールトライアル1は、骨盤102の寛骨臼102aに固定される前述のカップ105に嵌合されて、該カップ105の内面(ライナー105bの内面)107に接触する、球面の一部を成す摺動面9を有する前記ハット部材2と、大腿骨101の髄腔部101aに挿入されるステム103の、大腿骨101から突出するネック部分103aに挿入されて、前記ハット部材2に着脱可能に嵌合する前記スリーブ部材3と、前記ネック部分103aが挿入された状態で、該ネック部分103aを固定するための、可撓性および弾発性を有する固定部材4とを含む。
【0027】
(ハット部材2の構成)
図4はハット部材2の断面図である。図5はハット部材2を図4の断面図を正面から見た図であり、図6はハット部材2の左方から見た側面図であり、図7はハット部材2の底面図である。前記ハット部材2は、骨盤102の寛骨臼102aに固定されるカップ105に嵌合されて、該カップ105の内面107に接触する摺動面9を有する。
【0028】
前記ハット部材2はまた、スリーブ部材3が嵌合する嵌合凹所10を有し、前記嵌合凹所10に臨む内周部には、後述するスリーブ部材3の一対の係止突起11a,11bが嵌合して抜止めされる環状の係止凹部12aが、ハット部材2の軸線L1に関して同一軸線上に形成される。またハット部材2の内周部には、前記軸線L1と平行に平坦状の底面から前記係止凹部12aにわたって延びる一対の挿入溝12bが、前記軸線L1に関して周方向に180°位置を違えて軸対称に形成される。このような挿入溝12bを通過させて各係止突起11a,11bを前記係止凹部12aに挿入し、スリーブ部材3を軸線L1まわりに回転させて嵌合させる。また、スリーブ部材3を軸線L1まわりに回転させて挿入溝12bを通過させて係止凹部12aから離脱させることができる。
【0029】
前記ハット部材2は、前述のように、ボールトライアル1において、骨盤102の寛骨臼102aに固定されるカップ105に嵌合される部分であり、カップ105の内面107に接触する、球面の一部を成す摺動面9を有する。ハット部材2のカップ105の内面107に接触する摺動面9は、鏡面仕上げされており、算術平均粗さRaが0.05μm以下にされている。なお、算術平均粗さRaの測定は、JIS B0601:2001に準拠したものである。
【0030】
ハット部材2を構成する材料としては、たとえば、Co−Cr合金、Co−Cr−Mo合金などの金属材料、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア複合体などのセラミックス材料を挙げることができる。このような、金属またはセラミックスから成るハット部材2とすることによって、ハット部材2に傷が発生するのを抑制することができる。
【0031】
また、ハット部材2には、軸線L1に関して互いに軸対称な位置に、互いに平行に面取りされた2箇所の平面部2a,2bが形成されている。ハット部材2はまた、その外径D1(最大径)が、たとえば、22mm、26mm、28mm、32mm、36mm、40mmと異なり、複数種類のハット部材2が用意されている。平面部2a,2bには、外径D1の数字が記入されており、術者はハット部材2の外径D1を容易に確認することができる。
【0032】
(スリーブ部材3の構成)
図8はスリーブ部材3の正面図であり、図9はスリーブ部材3を図8の左方から見た側面図であり、図10はスリーブ部材3の平面図である。図3を参照して、前記スリーブ部材3は、ボールトライアル1において、ステム103のネック部分103aに挿入される部分であり、ハット部材2に着脱可能に嵌合する。
【0033】
前記スリーブ部材3は、前記ハット部材2に嵌合する略円柱状の部分3aに、該部分3aから突出する一対の係止突起11a,11bを有する。各係止突起11a,11bは、前記嵌合する部分3aの一半径線上に該部分3aの外周面から半径方向外方に突出し、スリーブ部材3の軸線L2に垂直な平面で切断したときの断面が半円状の半円柱状体として、前記部分3aに一体的に形成される。
【0034】
前記部分3aの前記軸線L2方向の一端部には、中空の逆円錐台状の受け部3bが、同軸にかつ一体的に形成される。この受け部3bは、ネック部分103aが挿通する円柱状の中央孔13を有する。前記部分3aにはまた、前記中央孔13に同軸に連なり、中央孔13よりも大径の短円柱状の挿入孔14と、挿入孔14に同軸に連なり、前記中央孔13よりも小径の貫通孔15とが形成される。前記中央孔13と挿入孔14とは、ネック部分103aが挿入されるステム接続孔を構成する。
【0035】
スリーブ部材3における貫通孔15は、ネック部分103aを前記中央孔13および挿入孔14に挿入/離脱させるときの空気の通路として機能し、中央孔13および挿入孔14を大気に連通させて、ネック部分103aをスリーブ部材3に対して円滑に装着し、あるいは離脱させることができる。
【0036】
挿入孔14には、前記ネック部分103aが挿入された状態で、該ネック部分103aを固定するための、可撓性および弾発性を有する固定部材4が収容されて配置される。なお、固定部材4は、シリコンゴムなどのゴム材料から成り、リング状に形成される。
【0037】
スリーブ部材3を構成する材料としては、たとえば、MCナイロン(登録商標)、POM(ポリアセタール、polyacetal、polyoxymethylene)、PPS(ポリフェニレンスルファイド、polyphenylenesulfide)、PES(ポリエーテルスルフォン、polyethersulfone)、PPSU(ポリフェニルサルフォン、polyphenylenesulphone)、PEI(ポリエーテルイミド、polyetherimide)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン、polyetheretherketone)などの合成樹脂を挙げることができる。
【0038】
また、スリーブ部材3の前記受け部3bには、軸線L2に関して互いに軸対称な位置に、互いに平行に面取りされた2箇所の平面部3c,3dが形成されている。平面部3c,3dを指で持って、ハット部材2とスリーブ部材3の着脱を容易にできる。
【0039】
また、スリーブ部材3は、ハット部材2の外径D1に応じて、前記嵌合する部分3aの軸線方向の長さ(ネック長)L10が異なるものが用意されており、ハット部材2とスリーブ部材3とは、表1に示す組合せで使用される。表1は人工股関節の一例であり、人工股関節の種類が異なれば、使用可能な組合せも異なる。表1において、符号「○」は使用可能な組合せであることを示し、符号「−」は使用不可能な組合せであることを示す。
【0040】
【表1】[fig000003]


【0041】
以上のように構成されるハット部材2とスリーブ部材3とを備えるボールトライアル1において、ハット部材2とスリーブ部材3とを嵌合させるに際しては、互いの軸線L1と軸線L2とが同一軸線を成すように配置し、ハット部材2の平面部2a,2bとスリーブ部材3の平面部3c,3dとの向きを一致させて、スリーブ部材3の係止突起11a,11bをハット部材2の各挿入溝12bを経て係止凹部12aに挿入した後、ハット部材2をスリーブ部材3に対して軸線L1まわりに90°回転させることによって固定される。
【0042】
このようにしてハット部材2にスリーブ部材3を嵌合させたボールトライアル1を用いて、ステム103におけるネック部分103aのテーパ部103bにスリーブ部材3を装着した後、仮整復を行う。
【0043】
なお、スリーブ部材3を交換する際は、ハット部材2の平面部2a,2bとスリーブ部材3の平面部3c,3dとの向きが一致する位置まで、ハット部材2をスリーブ部材3に対して軸線L1まわりに90°回転させて、各係止突起11a,11bを係止凹部12a内で各挿入溝12bに臨む位置に配置し、スリーブ部材3を軸線方向に引き出すことで、ハット部材2に対してスリーブ部材3を取り外すことができる。
【0044】
さらにまた、本実施形態のボールトライアル1では、カップ105との接触部分となるハット部材2の表面に傷が発生した場合に、ステム103のネック部分103aに挿入されるスリーブ部材3と独立して、ハット部材2のみを交換することができる。
【0045】
以上、本考案の実施形態について説明したが、本考案は上述の実施形態に限られるものではなく、実用新案登録請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。たとえば、前述の実施形態では、ステム103のネック部分103aに対して組合わされるボールトライアル1を例にとって説明したが、これに限定されるものではなく、ステムトライアルに対して組合わされるボールトライアル1として実施してもよい。
【0046】
1 ボールトライアル
2 ハット部材
3 スリーブ部材
4 固定部材
9 摺動面
11a,11b 係止突起
12a 係止凹部
12b 挿入溝
13 中央孔
14 挿入孔
15 貫通孔
100 人工股関節
101 大腿骨
102 骨盤
103 ステム
103a ネック部分
103b テーパ部
104 骨頭ボール
105 カップ

(57)【要約】

【課題】股関節の一部または全部を人工股関節に置換する手術において用いられる人工股関節用ボールトライアルであって、人工股関節用カップに収容される部分のみを、その他の部分と独立して交換することができる人工股関節用ボールトライアルを提供する。【解決手段】ボールトライアルは、ハット部材とスリーブ部材とを含む。ハット部材は、骨盤102の寛骨臼102aに固定されるカップ105に嵌合されて、該カップ105の内面107に接触する、球面の一部を成す摺動面を有する。スリーブ部材は、大腿骨101の髄腔部101aに挿入されるステム103の、大腿骨101から突出するネック部分103aに挿入されて、ハット部材に着脱可能に嵌合する。


【パテントレビュー】

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【インターネット特許番号リンク】

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